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(2)社会的課題に対応した物流システムの構築
 環境問題等の社会的課題に対応するため、(1)に掲げた効率化施策に加えて、以下の施策を実施する。
 
[1] 地球温暖化問題への対応のための施策
 
(輸送機関の単体対策等)
(ア)本年4月に創設されたグリーン化税制の活用等により低燃費車の導入を促進するとともに、トラック輸送の効率化の観点から、車両の大型化やトレーラ化を推進する。大型トラックヘの速度抑制装置の装備義務付けにより、大型トラックの燃費向上を図る。
 また、エネルギー消費効率の良い船舶(エコシップ)の導入促進を行うとともに、次世代内航船(スーパーエコシップ)の研究開発を推進する。
 このほか、国際航空機、外航船舶のバンカー油(燃料油)等による温室効果ガス排出の抑制を図るための国際的な検討を進める。
 
(社会資本整備)
(イ)車両の大型化に対応した橋梁の補強等道路整備や、国際海上コンテナターミナルや多目的国際ターミナル等の拠点的整備により輸出入貨物の国内陸上輸送距離を削減する。
 
(モーダルシフトの推進)
(ウ)鉄道貨物輸送については、貨物鉄道事業者が顧客のニーズに対応した優れたサービスを提供できるよう、主要幹線鉄道の輸送力増強、所要時間の短縮、荷役の効率化等を推進するとともに、貨物鉄道事業の活性化のため、日本貨物鉄道株式会社の完全民営化の早期実現を図るよう努めることとし、このため同社の経営改善を推進する。内航海運については、運輸施設整備事業団の共有建造制度の活用によるモーダルシフト船の建造、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの拠点的整備、港湾荷役の効率化・サービスの向上に関する検討等を進める。また、鉄道貨物駅や港湾へのアクセス道路を改善する。
 
(民間の自主的な取組を推進するための環境整備)
(エ)荷主や物流事業者が自らの物流活動による二酸化炭素排出量の把握や環境負荷の低減に取り組むことを促進するため、環境調和型の物流システムの在り方及びその標準化を検討するとともに、物流事業者が環境達成度を自己評価できるガイドラインを作成し、その普及を図る。
 また、荷主や物流事業者が協調して行う輸送の効率化、低燃費車の導入等への支援方策や、このような民間事業者の取組の指針となる二酸化炭素の削減目標を設定することについても検討を行う。
 
[2] 大気汚染等の環境問題への対応のための施策
 
(トラック輸送の効率化)
(ア)都市内物流の効率化を図るため、トラック輸送について、共同輸配送の実施や物流拠点の整備等によって貨物自動車運送事業の魅力を高めることにより、自営転換を進める。
 
(トラック等からの大気汚染物質の排出の削減)
(イ)トラックからのPM、NOx等大気汚染物質の排出の削減を図るため、自動車排出ガス規制を強化するとともに、低公害車・クリーンエネルギー自動車等の普及を図るため、グリーン化税制を活用するとともに、低公害燃料供給施設の整備を支援するほか、電気貨物自動車の共同利用システムの普及を図る。また、平成16年末までに軽油の低硫黄化を実施するとともに、現在使用されている車両への対策として、ディーゼル微粒子除去装置(DPF)の装着とこれに必要な低硫黄軽油の利用促進、貨物の積卸等のための継続的な停止の際のアイドリング・ストップ等エコドライブの励行等により、ディーゼル車からのPMの排出を削減する。さらに、改正自動車NOx法により、車種規制及び事業者指導等を適切に行う。
 
(都市内交通の円滑化等)
(ウ)トラック交通の集中している大都市部の幹線道路等の沿道におけるPM、NOx等による大気汚染等の環境問題へ対応するため、道路交通の改善に取り組む。
 このため、交通安全施設等の整備を進めるとともに、ITSの開発・活用を進める。さらに、都市圏交通円滑化総合計画の策定等により、三大都市圏における構造的な渋滞解消を図るため、通過交通を迂回させる環状道路等の整備や主要都市におけるボトルネック解消のための交差点及び踏切道の改良を進めるとともに、住宅地域に集中した交通を湾岸部に転換させるため、並行する有料道路間で料金に格差を設ける環境ロードプライシングの試行的実施などTDM施策の推進を図る。同計画の策定に関し、地域における自動車交通の調整、環境負荷の小さいトラックの導入等によるエコ共同集配事業等を実施するTDM実証実験の成果も活用する。併せて、荷主や物流事業者が協調して行うPM、NOx等の大気汚染問題の改善のための試みを促進する。
 また、大型トラック等に起因する自動車交通騒音を低減するため、低騒音舗装の敷設、遮音壁、環境施設帯の整備を行うとともに、「幹線道路の沿道の整備に関する法律」に基づき、沿道住宅の防音化などを実施する。
 
(物流拠点の整備等)
(エ)都市内に流入するトラックの交通総量の抑制に資するよう、流通業務施設の集約的整備の推進や、市街地外縁部の環状道路周辺や臨海部への物流拠点の立地を促進する。
 また、都市内の道路交通の円滑化を図るため、都市内建築物への荷捌き施設の付置、商業地区を中心とした共同の荷捌き施設及びトラックベイ等荷捌きのための路上停車施設の設置と適正な運用を推進するとともに、物流に配慮した合理的な駐車規制を実施する。
 
(船舶・鉄道の活用)
(オ)都市内物流を効率化し、環境負荷の低減を図るため、通過交通を始めとする都市内トラック交通需要について、輸送機関の特性に応じ、船舶、鉄道輸送の利用推進の可能性について検討を行うほか、大都市部の外沿に位置する港湾の活用を図る。
 
[3] 循環型社会実現のための静脈物流システムの構築のための施策
 生産拠点の状況、リサイクル関連拠点の配置計画、当該拠点間における輸送等の実態把握に努めるとともに、鉄道・海運の活用を含めて効率的な静脈物流システムについての検討を行い、その具体化を図る。
 また、広域リサイクル施設等の立地に対応した港湾施設等の整備、静脈物流の円滑化に資する廃棄物海面処分場の整備等、所要の施設整備を推進する。
 さらに、リサイクルのための共同事業の推進と競争政策の在り方に関するガイドラインの検討を進める。
 
[4] 事故防止等物流の安全問題への対応のための施策
 
(事故防止)
(ア)運送事業者の運行管理の充実を図るとともに、大型トラックの高速道路における速度超過による事故を防止するため、平成15年9月から速度抑制装置の装備を義務付ける。また、トラックの事故防止のためには、過積載の防止等安全関係規制の遵守についての関係者の理解が重要であることから、運送事業者及び荷主に対する安全対策の啓発に努める。
 さらに、交通安全施設等の整備を進めるとともに、ITを活用した新たなシステムの採用により、道路交通の安全性を高めることとし、VICS、ASV、走行支援システム、UTMS、スマートウェイ等のITSの開発・活用を進める。
 加えて、海上交通の安全性確保のため、航海支援情報の高度化、船舶航行のボトルネックが生じている国際幹線航路の整備、港内静穏度の向上、船舶輻輳海域における船舶の新しい通航方式等についての検討、海上交通情報機構の整備・運用等を行うほか、ITを活用した次世代海上交通システムの構築を進めることにより、船舶の衝突・座礁の回避の支援、船舶の交通管制及び安全管理の高度化等を図ることとする。
 
(安全規制の適時適切な見直し)
(イ)技術革新、社会の経済情勢の変化を踏まえ、安全規制が所期の目的に照らし過重なものとなっていないかを点検する。
 具体的には、分割不可能貨物を輸送する基準緩和車両による輸送に関する規制について、関係法令が厳に遵守される制度、方策等の検討を行い、現行の規制の緩和について結論を得る。また、踏切道及びその周辺の交通規制のあり方について、引き続き検討する。
(3)国民生活を支える物流活動を確保するための施策
 
(国民ニーズに対応した物流システムの構築)
(ア)食品等への高品質・高鮮度志向等消費者ニーズに対応するため、生産地から消費地までのコールドチェーンシステム(低温物流一貫体系)の整備を促進する。
 
(事後規制への転換における消費者利便の保護)
(イ)倉庫業の参入許可制を登録制に改め、料金の事前届出制を廃止するとともに、貨物自動車運送事業及び貨物運送取扱事業の運賃・料金規制を事後チェック型に転換することについて結論を得る。その際、優良トランクルームの認定制度を導入するなど、消費者保護を図る。
 
(街づくりにおける物流の円滑化への配慮)
(ウ)都市内建築物の構造等において、物流円滑化への阻害要因を改善・解消するための指針を作成する。また、都市内建築物への荷捌き施設の付置、商業地区を中心とした共同の荷捌き施設及び荷捌きのための路上停車施設の設置と適正な運用を図るほか、商業業務地における荷物の搬入の容易化を検討するなど、街づくりにおいて物流の円滑化に配慮した取組を行う。
 
(物流の安定性の確保)
(エ)離島地域を含め、国民生活を支えるために必要な物流機能を確保する。また、災害等の緊急時においても、必要な物流機能を確保することを目指し、橋梁・岸壁等の耐震・耐雪性等の向上や河川敷の活用等緊急時の代替手段・ルートの確保を図る。
 さらに、将来にわたっての貿易物資の安定輸送の確保を図るため、我が国外航海運の競争力を維持強化するための施策や船舶交通が輻輳する国際海峡等海上輸送ルートの安全確保対策を講じる。








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