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第二部 具体的施策
 総合的な物流施策の推進に当たっては、当面、次の施策を強力に推進することとする。また、第一部に示す基本的な考え方に基づき、以下に掲げる施策に加え、物流が抱える課題を解決するための施策を具体化し、推進することとする。
(1)国際競争力のある社会実現のための高度かつ全体効率的な物流システムの構築
 
[1] 高度かつ全体効率的な物流システムの構築のための施策
 
(物流の共同化・情報化・標準化の推進)
(ア)物流の飛躍的な効率化、さらには環境負荷の大幅な低減を実現する観点から、物流活動の共同化を進めるとともに、これまで実施されてきた各種施策の成果も活用しつつ、物流分野における情報化・標準化を推進する。
 物流に係る広範な取引の情報化に必要な物流EDIについては、インターネットに対応可能な構造(拡張可能なマーク付け言語(XML)に対応可能な構造)である国内物流EDI標準(JT RN)の普及実態を業種横断的に把握しつつ、その普及に努めるとともに、国際物流に関しても、標準EDIの開発・導入を推進する。さらに、生鮮食品等の分野においても標準EDIの普及に努める。また、EDI化に対応した出荷・輸送・荷受一貫ラベル(STARラベル)のJIS規格化を行う。
 また、地理情報システム(GIS)等の物流分野への活用の促進や輸送モード横断的な情報プラットホームである物流総合情報提供システムの構築等を図るとともに、輸送分野毎の情報化を促進する。道路輸送の分野では、トラック運送事業の高度情報化並びに自動車の走行を支援するITSの開発及び活用を進めるとともに、道路交通情報提供を行う民間事業者が渋滞予測等の新サービスを行うための環境を整備する。海上輸送の分野では、海上物流の効率化と安全性の向上を図るため、船舶の知能化及び陸上支援の高度化などITを活用した次世代海上交通システムの構築を進める。さらに、航空貨物の分野では、航空運送状等に関する情報を関係者間で電子的に交換するためのシステムであるカーゴコミュニティシステム(CCS)について、官民のシステムの接続等によりネットワークの効果を高める。
 
(商慣行の改善)
(イ) 社会的に非効率な物流活動を招く恐れのある商慣行について、商慣行実態調査の実施や、物流合理化ガイドラインの活用等により改善を図る。その際、物流合理化ガイドラインについてフォローアップを行うとともに、業界の実態等を踏まえ必要に応じて見直しを行う。
 また、個別の物流コストの低減のみに止まらず、企業内・企業間の情報共有化による全体的なコストの低減の観点が重要であることから、その前提となる、より正確な物流コストの把握と管理を促すため、「物流コスト算定活用マニュアル」の利用推進、「物流コスト実態調査」結果の普及・活用に努めるとともに、活動基準原価計算(ABC)等の物流コスト把握のための有効な手法の活用を慫慂する。
 さらに、荷主に対して物流改善を行う提案型物流サービスを物流事業者が行う場合の環境整備を行う。
 
(規制改革、行政手続の簡素化・効率化)
(ウ)これまで実施してきた規制改革措置の成果をより確実なものとするとともに、引き続き参入規制、運賃・料金規制の緩和等の規制改革を推進することにより、利用者の自己責任による事業者選択の拡大及び事業者の自由な経営戦略の展開を促進する。具体的には、規制改革推進3か年計画において示された手順、スケジュール等に従って進める。
 また、技術の進展等を踏まえ、安全基準の適時適切な見直しを行っていくことにより、民間セクターの過度な負担を軽減する。
 さらに、申請者負担の軽減を図るため、航空輸出貨物について予備審査制度の導入や一定の金額以下の小口急送貨物についてマニフェストによる申告を認める等行政手続の改善を進めるとともに、特殊車両通行許可申請手続等の電子化(ペーパーレス化)、ワンストップサービス化等の推進により、手続の簡素化・効率化を進める。
 
(新技術の開発と利用)
(エ)物流の迅速化や効率性の向上等に資する新技術の開発と利用に積極的に取り組むこととし、陸上輸送の分野においては、道路交通情報通信システム(VICS)、ノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)、先進安全自動車(ASV)、走行支援システム、新交通管理システム(UT MS)、電子ナンバープレート(スマートプレート)、インターネットITS、プローブ情報システム等のITS技術の開発・活用を促進する。また、海上輸送分野においては、次世代内航船(スーパーエコシップ)の研究開発や、ITを活用した次世代海上交通システムの構築等への取組による海上輸送の新生を図るとともに、テクノスーパーライナーの事業化を進める。航空輸送分野においては、次世代航空保安システムの整備を推進する。そのほか、貨物や輸送機器の電子的な管理手段として今後広く利用が見込まれる狭域通信(DSRC)システムや無線利用による移動体識別(RFID)について、その導入・普及を促進する。さらに、空間を考慮した新しい経済モデルにより効率的な物流の在り方を分析する等、人文・社会科学分野の研究にも取り組む。
 
(ユニットロード化の推進)
(オ)作業効率を向上させるとともに、高齢者や女性にも適した作業環境の構築に資する一貫パレチゼーションを中心としたユニットロード化を促進するため、その普及のための調査を実施するとともに、JIS規格パレットの共同利用・共同回収に資するパレットプールシステム等の浸透やユニットロード化に資する物流機器の導入及び施設の設置に対する支援等を図る。
 また、物流活動を一貫してのパレット利用を促進するため、引き続き、T11型パレットを基本とする「ユニットロードシステム通則」の普及等を行う。さらに、各業種におけるユニットロード化に資するとの観点から、JIS規格化されたパレットによる「パレットシステム設計基準」の標準化を行う。加えて、T11型パレットの国際標準化や、それを基本としたJIS規格パレットのアジアにおける普及に取り組む。
 
(物流関連社会資本の整備推進等)
(力)[2]に記述する国際物流拠点の機能強化のための関連社会資本の整備のほか、国内での地域間物流及び都市内物流に関連する社会資本の整備を進める。
 地域間物流においては、マルチモーダル施策を推進することとし、トラック輸送については、効率的な広域物流ネットワークを形成する高規格幹線道路及びこれと一体となって機能する地域高規格道路等の幹線道路網並びに物流拠点を結ぶアクセス道路の整備を重点的に進める。また、車両の大型化(総重量25トン)に対応するため橋梁の補強等を進めるほか、幹線輸送の効率化・共同化の推進のため関係省庁が連携して、流通業務施設の集約的整備、高規格幹線道路のIC周辺等での広域物流拠点と道路の一体的整備等を進める。内航海運については、船舶の高速化や複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの拠点的整備等を進める。貨物鉄道については、主要幹線鉄道の貨物輸送力強化等を進める。これらに加えて、関係機関が連携・共同して作成する広域交通基盤連携強化計画に基づき、空港、港湾、駅等の物流拠点及び高規格幹線道路並びにこれらを相互に接続するアクセス道路等を重点的かつ効果的に整備するマルチモーダル交通体系連携整備事業を推進する。
 都市内物流においては、都市内交通を円滑化してトラック輸送の定時性及び速達性を改善するため、都市圏交通円滑化総合計画の策定等により、通過交通を迂回させる環状道路、バイパス等の整備、交差点及び踏切道の改良等によるボトルネック対策、交通管制センター等の交通安全施設の整備等の交通容量拡大策とTDM施策を推進する。また、関係省庁、地方公共団体及び民間事業者が連携して、市街地外縁部の環状道路周辺や臨海部への物流拠点配置及び都市内集配拠点の整備の促進、商業地区を中心とした共同の荷捌き施設及び荷捌きのための路上停車施設の設置と適正な運用の推進並びに物流に配慮した合理的な駐車規制を実施する。
 
[2] 国際物流拠点の機能強化等のための施策
 
(国際物流関連社会資本の重点的整備・機能向上等)
(ア)海上輸送の効率性と船舶航行の安全性を両立させた海上ハイウェイネットワークを構築し、物流の効率化を図り、近隣の先進港湾と遜色のないレベルまで港湾機能を向上させる。具体的には、国際海上コンテナ輸送の増大や船舶の大型化に対応して、東京湾口航路等の国際幹線航路、中枢・中核国際港湾における国際海上コンテナターミナル、多目的国際ターミナル等の整備を進め、輸出入コンテナの陸上輸送費用を施設配置が平成9年大綱の策定時のまま推移した場合と比較して21世紀初頭に約3割削減することを目指す。また、ITの活用等によりコンテナターミナルの能率を飛躍的に向上させるとともに、外貿バースに隣接した内貿フィーダーバースの計画的整備等を行うことにより、内外貨物の積替えの円滑化を図る。さらに、増大する輸入コンテナ貨物の流通加工ニーズに対応するための施設の港湾地区における立地の促進を図る。併せて、PFI等の手法も含め整備運営の効率化を図るとともに、コンテナターミナルの効率的運営や使い勝手の良い港湾施設使用料金の在り方及び港湾荷役の効率化・サービスの向上に関する検討を進める。
 国際航空貨物輸送に関しても、増大する需要に対応するため、大都市圏における拠点空港の整備を推進する。
 これらと併せて、ISO背高海上コンテナ等の輸出入貨物の円滑な陸上輸送を確保するため、トンネルの再改築等の道路構造対策や港湾・空港へのアクセス道路の整備を進めるとともに、鉄道による海上コンテナ輸送に関する検討を行う。
 
(港湾の24時間フルオープン化等への対応)
(イ)平成13年4月には、日曜荷役の恒久的実施、祝日の平日並夜間荷役の実施、年末年始休暇の短縮及びターミナルゲートオープン時間の延長に関し労使間で合意が得られた。引き続き、港湾荷役の更なる効率化・サービス向上を図るため、情報化の推進、作業の共同化等による事業基盤の強化を進めるとともに、行政手続においても取扱時間の延長等に努めつつ、港湾の24時間フルオープン化の早期実現に向け、関係者の取組を促進する。
 また、迅速な通関に資するため、予備審査制度及び平成13年3月に導入した簡易申告制度の周知と利用促進を図る。
 
(各種手続の電子化、ワンストップサービス化)
(ウ)規制改革推進3か年計画に基づき、平成13年度中に、輸出入及び港湾諸手続について、関係官庁の中でネットワークを通じた効率的な情報の共有・活用を可能とするための検討体制の整備を図る。その際、統計情報を含め、現行の提出書類を徹底的に見直し、申請手続フォーマットの集約化を検討する。
 また、平成13年度中に、通関情報処理システム(NACCS)と港湾EDIシステムの接続を行うことに続き、平成14年度中に、NACCSと外国為替及び外国貿易法に基づく輸出入許可・承認手続システム(JETRAS)の接続及びNACCS、港湾EDIシステムと乗員上陸許可支援システム(仮称)の連携を行う。さらに、航空貨物通関情報処理システム(Air−NACCS)を更改し、機能強化及び地域の拡大を図る。加えて、平成15年度までの実現を予定している輸出入手続の電子化の一環として、民間の公金収納インフラの利活用や各種輸出入手続の申告・申請・受付システムと貿易関連手続の電子化に係る民間システムとの連携等を検討する。また、国際的な税関手続にかかる申告項目及び電子申告フォーマットの標準化を推進する。
 さらに、関係省庁及び港湾管理者への輸出入及び港湾諸手続に関する各電算システムの利便性向上に取り組むとともに、届出項目の整理、調整等を進め、できる限り早期に、ワンストップサービス化を完了する。
 このほか、陸上輸送、外航海運、港湾運送等様々な事業者が介在する国際海上貨物輸送分野においては、民間におけるEDIの導入を促進するとともに、UN/EDIFACTとの整合性を確保した形で、EDIデータ項目の定義等を行い、国内物流EDIや民間貿易金融EDI等との連携を支援する。








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