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5.POLINET(港湾物流情報ネットワーク)
(1)POLINETの概要
 港湾物流情報ネットワーク(ポリネット:Port Logistics Infomation Network)とは、海貨業者、検数・検量業者、船社(船舶代理店)及びコンテナターミナル等国際港湾物流関係者をネットワークで結び、電子データー交換(EDI)により、輸出入貨物に係る重層多面的な船積手続き業務の迅速化、大量かつ集中する書類処理の効率化を図るシステムである。
(2)運営組織 (社)港湾物流情報システム協会(略称:港シ協)
(3)取扱い対象業務
 外航定期船貨物の船積みまでの輸出業務及び荷渡しまでの輸入業務。(自動車運搬船を含む)
(4)ネットワークシステムの構成
 本ネットワークシステムは、センターである日本ユニシス情報システムの「UISアウトソーシングセンター」、(株)NTTデータの「TWIN’ET DXセンター」、日本IBM(株)の「NMS」及び日本電気(株)の「C&C」とを結ぶオープンネットワークシステムであり、利用企業はいずれかのセンターと接続する。
(5)使用フォーマット
 SHIPNETSフォーマット、Web−POLINETフォーマット、UN/EDIFACTやCII標準、Private(企業個別)フォーマット。
(6)システムの効果
[1]港湾貨物に関する情報を共同利用型ネットワークシステムを介して授受することにより、情報伝達の迅速化、データ入力作業の大幅省力化、書類託送費用の削除が可能になる。
[2]業種間におけるデータの相互利用により、データ再入力の減少によるタイプミスの防止やデータ精度の向上、照合作業の省力化が可能になる。
[3]データのフォーマット(書式)の標準化により、各企業がデータ交換を行うための社内システム開発の重複投資を回避できる。
[4]EDIによるデータの伝達によって、ハードコピーによる船積書類提出の省略、提出書類枚数の削減など、ドキュメントレス化が可能となる。
(7)沿革
[1]第一次実験を海貨(1社)、検量(1社)、検数(1社)、船社(1社)の合計4社で1982年8月〜12月まで実施。
[2]1985年8月、海貨(33社)、検量(2社)、検数(2社)、船社(6社)の合計43社でSHIPNETSセンター発起人組合を設立。
1985年10月より1986年3月まで京浜港にて第二次実験を実施するとともに、主要港湾において新規参加企業を募集。
[3]1986年4月、SHIPNETSの運営・管理を行うSHIPNETSセンター(民法上の組合組織)を設立し、本格稼働を開始。京浜港における実験参加企業により順次本番へ移行。
[4]1993年6月、(社)港湾物流情報システム協会を設立し、同年7月事業開始。
[5]1995年3月、ネットワークシステムの名称をSHIPNETSからPOLINETに改称。
[6]1995年7月、NTTD(TWIN’ET)、IBM(NMS)、NEC(C&C)の3社を結ぶオープンネットワークを完成。
[7]1998年10月より使用フォーマット(書式)として、従来のSHIPNETSフォーマットに加え、U N/EDIFACTやCIIの各標準書式、その他企業個別書式を採用し、取扱い業務を大幅に拡大。
[8]2001年2月、インターネットによる「インターネットEDI」(フェーズI)を導入し、新たに「Web−POLINET」及び「Cyber−POLINET」を運用開始。
[9]2002年3月、「インターネットEDI」(フェーズI)の機能を拡充し、フェーズIIとして運用開始(予定)するとともに、「海貨業務システムASPサービス」の運用開始(予定)。
(8)稼働状況
○ 業種別稼働状況 
(平成13年11月30日現在)
業種 会員数 回線接続 本稼動 合計 稼働率
既存POLINET インターネット
NTTD C&C Web Cyber
海貨
(事業所)
101 55 46 3 2 1 52 51.5%
162 79 62 4 2 1 69 42.6%
船社・
代理店
12 9 8 0 0 1 9 75.0%
検量 2 2 1 0 0 1 2 100.0%
検数 2 2 2 0 0 0 2 100.0%
合計 117 68 57 3 2 3 65 55.6%
準会員数8社(団体)、賛助会員数6社(団体)
 
○ 海貨事業所地区別状況 
(平成13年11月30日現在)
地区 事業所数 ファイルセット 回線接続 本稼動 稼働率
東京 23 14 12 10 43.5%
横浜 45 33 28 28 62.2%
清水 1 0 0 0 0.0%
名古屋 24 16 13 11 45.8%
四日市 1 1 1 1 100.0%
大阪 29 19 8 6 20.7%
神戸 39 30 17 13 33.3%
合計 162 113 79 69 42.6%
(9)港湾貨物情報ネットワークシステム(POLINET)の処理概要(SHIPNETSフォーマット使用の場合)
ばら貨物の場合
(拡大画面: 77 KB)
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コンテナ貨物の場合
(拡大画面: 96 KB)
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(10)新しいITを活用したネットワークの導入
[1]インターネットEDI
 図-1は港シ協が平成13年2月に運用開始した新しい「インターネットEDI」の概念図を示している。図の上半分が新しい「インターネットEDI」、下半分は既存POLINETを表している。
 「インターネットEDI」の送信方法には次の2方式があり、利用者の社内の環境に適した方式を選択可能である。
 
ア.“Web−POLINET”:Webブラウザを利用してWeb画面に入力し送信する方式。
通常のブラウザソフトが搭載されているパソコンとISPとのインターネット利用契約があれば利用できる。社内業務システムを持たず、送受信データ量の少ない事業者向き。
イ.“Cyber−POLINET”:通信プロトコルとして全銀TCP−IPを使って、エクストラネット(閉域IPネット)経由、EDIの送受信を行なう方式。従来POLINETで扱ってきたSHIPNETSフォーマット及びUN/EDIFACTのメッセージは、すべて送受信できる。社内業務システムを持ち、送受信データ量の多い事業者向き。
 
 また、既存POLINETとの相互接続により新旧のネットワーク利用者間の送受信が可能である。
 さらに、新ネットワークセンターには、電子書式変換機能を組み込んでおり、業界標準(SHIP NETSフォーマット)、世界標準(UN/EDIFACT)Web書式(Web−POLINETフォーマット)を使用する利用者間でも送受信できる。
 従来のPOLINETは、業務システム、標準電子書式への変換ソフト、VAN−EDI対応ソフトを装備した社内システムを持っている事業者だけしか利用できなかった。また、センターに電子書式変換機能を組み込んでいなかった。新ネットワークサービスの運用開始により、特に社内業務システムを持たない中小の事業者や国連標準書式を利用する外国船社も容易にPOLINETによるEDIに参加できるようになった。
 平成14年3月からの「インターネットEDI」のフェーズIIでは、取り扱いメッセージが拡大され、海貨と船社間で送受信されるEDI基本情報が整うことになる。また、データ入出力機能、標準帳票/個別帳票対応の印刷機能等も拡充され、インターネットEDIの使い勝手が大幅にグレードアップする。
 
[2]海貨業務システムASPサービス(eForwarder ASP)
 
ASPとは=Applicayion Service Providerの略。インターネット利用のソフトウェア期間貸し出しサービス。センターのサーバーに業務ソフト及びデータベースがインストールされており、利用者は利用契約により必要な機能を必要な期間利用できる。投資負担に限りがあり、人材も不足している中堅・中小企業を中心に今後、利用が広がると期待されている。
 
 本格的なEDIのためには、社内業務システムを持つことが必要であるが、中小事業者にとっては、情報化投資負担への対応が困難であることがEDI阻害要因の一つだった。
 港シ協では、これを打開する方策として中小の海貨業者向け海貨業務システム(eFowarder)をアウトソーシングセンターに構築し、自社で社内業務システムを構築する費用の1/4〜1/5程度の廉価な利用料で期間貸しするASPを平成14年3月から運用開始する。海貨業務システム(eFowarder)は、海貨の基本業務に対応しており、本ASPサービスを利用することにより業務処理は飛躍的に能率アップする。また、Cyber−POLINETによるEDI送受信もでき、Sea−NACCSにも対応できることから、海貨の業務処理が効率的になり、かつEDI普及効果も高い。
 図-2はeForwarder ASPのネットワーク概要を示している。ASPセンターは日本ユニシス情報システムのアウトソーシングセンターに置く。ASPサーバーを設置し、海貨業務システム(e Fowarder)およびPOLINETやNACCS対応機能を組み込む。ASPユーザーは、インターネットを利用し、ASPサーバーにアクセスし、eForwarderをあたかも自社システムのように使うことができる。このASPシステムは、同じアウトソーシングセンターにあるCyber−POLINETと接続されているので、ユーザーはASPサービスのPOLINET対応機能によりEDIメッセージを自動的に作成し、船社や検量・検数と送受信ができる。ASPユーザーに必要な環境は、担当者が使うパソコンとインターネットの利用契約だけであり、利用者にはID・パスワードが付与され、利用担当者毎にシステム機能の利用範囲を指定できることから、セキュリティも万全である。
 
図−1 インターネットEDI概念図
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図−2 eForwarderASPのネットワーク概要
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