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[29] 杉樹皮製油吸着材の開発と海洋流出油回収への適用(第1報)
斉藤雅樹, 石井信義(大分産科技セ)
小倉 秀(海災防セ)
前村伸二, 鈴木浩久(海保庁)
 
 杉樹皮製油吸着材は製造・使用・処分時における環境負荷低減を目的に開発した油濁対策資機材である。基礎的実験の結果, 繊維サイズが大型な程, また乾燥状態にある吸油機能に優れており, 最高で自重の13.4倍(A重油)の吸油機能を有することが判明した。実用化に向けた水槽実験の結果, 以下をはじめとする4種の製品形状が適することが判明した。

[30] 荒天対応型大型油回収装置の開発(その2)
小野志郎(三井造船)
大森英行, 中川寛之(三井造船昭島研究所)
岩崎 徹, 山賀秀夫, 小澤宏臣(三井造船)
 
 前研究で開発された高粘度油吸引ポンプを搭載する浮体は, シミュレーションおよび水槽実験等により, 波浪追従性能に優れ, 油吸引口周辺の流動性が高く, かつ, ハンドリングおよび機器装備等が容易なストラット型浮体が適している事が判明した。さらに, 油を使用しない水での実験およびシミュレーションが浮体の設計に適用可能であることが確認された。ニュートン流体による解析手法は高粘度油の流動シミュレーションに適用可能であることが確認され, ケーススタディーにより集油装置が高粘度油回収効率の向上に有効なことが判明した。集油装置は可動部がなく異物等に対応できる水噴射式を選定すると共に模型実験により, 適切な水噴射条件を把握した。次いで, 大型のプロトタイプ油回収装置を用いた波浪・水流中での高粘度油吸引実験により, 本油回収装置は荒天下海域における高粘度油(0.1m2/s(10万cSt)以上)回収・処理性能について確認され, 実用化の段階に至った。

Large-size model test in waves and current
[31] 船舶が排出する二酸化炭素の海中溶解・固定に関する研究
金井 健, 武隈克義, 佐藤和範(SRC)
高橋勝六(名古屋大), 山口省吾(MHI)
 
 船舶が排出するCO2を削減するための新しいコンセプトとして, 排ガスを直接船体周囲の海洋にマイクロバブルとして排出し, 排ガス中のCO2を海水に溶解させる方法を研究した。排出直後の気泡の挙動を実験・理論の両面から検討し, 気泡流の実用的モデルを構築した。これを用いCFDをベースとした気泡挙動計算システムを構築し, 気泡滞留時間, 摩擦抵抗低減, プロペラ特性変化, 気泡排出動力を計算した。この結果, CO2の海水溶解にとって充分な気泡滞留時間を確保できること, 気泡排出方法を適切に選定すれば, 全動力を増やすことなく, 大気中に排出するCO2を削減することができる可能性があることなどが確認された。

載貨状態がCO2溶解特性, 摩擦抵抗, 全動力に及ぼす影響
[32] 数値シミュレーションによる海底砂採取が仔稚魚輸送に与える影響の予測に関する研究
末永慶寛(香川大), 増田光一(日大)
田中和広(日本港湾コンサルタント)
 
 瀬戸内海の備讃瀬戸海域はイカナゴの主産卵場の一つとなっている。また備讃瀬戸海域では建設工事の為の骨材資源として1950年代半ばから海砂採取が行われており, 直接的にイカナゴの産卵場や生息場を消失, 減少させている。しかし1998年においてこの海域における海砂採取による直接的な砂堆域面積の減少は1977年頃と比較して13%程度であるにもかかわらず, イカナゴ漁獲量は80%以上低下している。この要因の一つに海砂採取による水深の増大が考えられる。そこで備讃瀬戸海域における自己遊泳力の乏しい時期のイカナゴ仔稚魚を対象に, 海砂採取による水深の変化が仔稚魚の成育場への輸送に及ぼす影響を数値モデルにより評価することを目的とした。その結果, 備讃瀬戸西部海域の成育場へ輸送されるイカナゴ仔稚魚が約17%減少することが数値モデルにより指摘された。

海砂の採取量とイカナゴ仔稚魚の生育場への滞留率








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