日本財団 図書館


第3章 標準作業手順書及び作業要件書の骨子
3.1 作業の分類
 機械化・自動化の進展と各種の生産性向上施策により、わが国の中小造船業における職種区分や作業内容は、変化しつつある。一方、合理化策の一環としての下請け依存率の増大は、請負契約に際し「作業内容」を明確にすることが求められる。このような背景から、中小造船業における職種区分や作業内容を調査し、下記作業分類を試みた。
(注)本年度は、船殻と修繕船作業を主とし、艤装関係は次年度に予定。
(1) 船殻作業の分類
 運輸省が昭和40年前後に分類した造船所の職種数は、約130〜135あったように記憶する。その後、船体構造が鋲構造から溶接構造に変化し、一方設備の近代化に伴って職種とその仕事内容は大幅に変化した。さらに、近年の低船価時代にあって、主として固定雇用人員を必要最小限にすることによって固定費を削減し、実際の仕事は仕事量にあわせて構内の外注業者に請け負わせる経営方式(モデル)が主流になるに及んで、職種の統合が進みつつある。
 かっては、船殻作業を加工、組立、搭載などのステージに分け、ステージ内の各作業を単一専門職化することで生産性向上を図ってきた。この方式が崩れ、単一職をいくつか束ねて多能工化することによって、職種間の作業量のアンバランスを吸収し、手待ちを防ぐのが、コスト削減にはより有効と判断されている。背景には、NCプラズマ切断機の導入により専門のガス切断職の仕事量が大幅に減少した例のように、かっては専門技能職とされた多くの作業が機械化により単純作業化されて、作業内容が変化した。溶接作業も同様、機械化、半自動化機器が普及して手溶接範囲が縮小しつつある。依然として専門技能を要求される船殻作業は、もはや撓鉄、曲がりブロックの組立、位置決めを残すだけになったといっても過言ではないであろう。このように、現在の複合職化、多能工化の傾向は、従来の船殻作業が専門職から単純職化されたことが大前提としてある。
 こうした背景を踏まえ、船殻作業内容を実地に調査した上で、船殻作業の単位作業と、その作業内容の分類を試みた。
 実地に調査した結果、造船所により職種、作業内容の呼称にも大きな違いがあること、かって重要といわれていた職種の作業が、全面的に業者に一括外注、全面委託することによって、造船所から消滅しつつある職種が多いことも判明した。各造船所における職種呼称一覧を添付資料5に、調査結果をもとに、新たに試みた新造船(船殻)作業の分類を表3.1に示す。
(注)本作業分類(職種区分)の作成にあたっては、訪問調査先の内部資料を参考にさせていただいた。ここに記して感謝します。
表3-1 新造船(船殻)作業分類
工程 職種区分 作業名
現図 現図 線図作成・フェアリング 外板展開および一品展開 曲げ型作成 計測テープおよびブロック仕上げマーキング マーキング
加工 NC切断 NC切断機操作 文字マーキング 部材切り離し グラインダ仕上げ  
鉄板手切り 半自動ガス/プラ
ズマ切断機操作
小部材罫書き      
型綱切断 罫書き 切断(ガス、鋸盤)、仕上げ 型綱自動切断機操作    
鋼板曲げ 鋼板曲げ加工(プレス/ローラベンダ) 熱曲げ加工      
型綱曲げ 型綱曲げ加工(フレームベンダ) 型綱熱曲げ加工      
配材・整理 鋼板水切り、山操り・山分け、加工材 外注材整理・積込      
組立 小組立鉄工 面取り(グラインダ) 配材・組立仮付け      
小組立溶接 小組立手溶接(CO2、手棒) グラビティ・小組立ロボット操作      
大組立鉄工 配材・定盤・治具材準備 大組立・仮付け、保持材・補強材取付 計測・確認    
大組立溶接 ユニオンメルト溶接(溶接機操作) 大組立手溶接(CO2、手棒) グラビティ・溶接ロボット操作 片面自動溶接(ブロック)  
船台 船台鉄工 ブロック事前計測・調整 搭載用治具・支持材準備 船台上ブロック位置決め・固定・盤木調 ブロック支持材配置・取付 罫書き・切断
寸法計測・確認 ブロック位置決め仮溶接 開先修正、治具材による面合わせ 背焼き  
船台溶接 片面自動溶接 搭載箇所手溶接(CO2、手棒) ガウジング、グラインダ 治具はずし・整理  
船台木工 盤木位置、ブロック
搭載時盤木調整
保持材設置 進水装置設置 進水作業  
グラインダ 熔接ビード、治具後、ピース撤去後        
歪取 歪取り 小組立品・ブロックやせ馬矯正 外板歪取り 甲板歪取り 壁歪取り  
船体ぎ装 鉄ぎ装 鉄ぎ装品製作 鉄ぎ装品取付 鉄ぎ装品溶接 各ぎ装品検査準備及び受検  
管ぎ装 完成管・合わせ管・型取り管の取付 管漏れテスト受検 通水・通気の確認    
甲板仕上げ 甲板諸機械の積み込み・据付 各機器の運転準備及び運転      
管製作 管製作 管曲げ加工(パイプ 管付金物取付・溶 圧力テスト    
機関ぎ装 鉄ぎ装 鉄ぎ装品製作 鉄ぎ装品取付 鉄ぎ装品溶接 各ぎ装品検査準備及び受検  
管ぎ装 完成管・合わせ管・型取り管の取付 管漏れテスト受検 通水・通気の確認    
機関仕上げ 軸系・舵関係見通し・据付 主機関積込・組立・据付・運転 補助機器の積込・据付・運転・調整 各検査準備及び受験 予行・公試運転
製缶 製缶 置きタンク等タンク類製作 据付・取付・溶接      
機械加工 機械加工 機器台表面仕上げ加工 推進軸切削加工 推進軸路ボーリング その他機械加工  
電気ぎ装 電気ぎ装 電路取付・溶接 電線敷設 航海計器据付・調整・試運転 制御機器・盤据付・調整・試運転  
塗装 磨き 掃除及び磨き(パワーツール) 養生・シンナー拭き      
塗装 塗料準備・塗料攪拌 塗装(エアレス、ローラ、刷毛塗り) 乾燥及び通気機材設置 塗膜検査、手直し、ガス検知  
掃除 掃除 倉内掃除 機関室内掃除 居住区内掃除 廃棄物運搬・焼却  
クレーン クレーン運転 大型クレーン運転 遠隔操作式クレーン操作 フォークリフト・重量物運搬車運転 各クレーン点検・整備  
運搬 運搬 部材移動・反転(玉掛) 作業機器船内積込・積下し 主機・補機・舵・プロペラ・軸搭載 ワイヤ点検・整備  
足場 足場 作業足場架設・撤去(組足場、丸太足場、吊り足場、手 足場資材点検・整備      
検査 検査・テスト ブロック検査(組立精度、溶接) 空気・水圧テスト      
治工具 治工具整備 治工具保管 治工具修理 治具製作(吊ピース、足場ピース、その他組立治具)    
木ぎ装 木ぎ装 倉内木ぎ装 糧食内木ぎ装 居住区内木ぎ装・家具据付 床舗装  
船具操船 船具・操船 ワイヤ・係船索具類・アンカーチェーン積込・収納 造作類船内積込 タグボード、交通船運転、離・接岸    
倉庫 倉庫 資機材検収・保管・払い出し 資機材集配材      
動力 動力・保全 構内動力設備運転(電力、ガス、水) 廃水処理設備運転      
安全 安全衛生 安全点検 安全指導      
 
(注)船穀を主体としているが、艤装の仮分類も含めた。
(2) 修繕船作業の分類
 修繕船作業は、仕事の性格上、新造船に比べ機械化が進んでいない。このため、新造船(船殻)作業とその職種、作業内容が大きく乖離し、独特の職種や作業内容が存在する。現地調査した造船所別の作業・職種呼称名を添付資料5に、調査結果をもとに新たに試みた修繕船作業内容を表3.2に示す。
表3.2 修繕船作業分類
職種区分 単位作業
現図 船体型取り 部材展開 部材型紙作成  
鉄工 船殻・鉄ぎ装品組立・取付      
マーキング 船殻・鉄ぎ装品取付マーキング      
ガス切断 船体・鉄ぎ装品不良箇所切断 船殻・鉄ぎ装品部材切断    
曲げ加工 船殻・鉄ぎ装品プレス加工 熱曲げ加工(撓鉄)    
電気溶接 船殻・鉄ぎ装品溶接      
塗装 船底洗い カキ落し 外板及び倉内錆落とし・塗装 工事箇所塗装
圧力テスト・給水 荷役ホーステスト 救命艇エアータンクテスト 各種タンクエアー・水圧テスト 入出渠バラスト海水・清水供給
甲板仕上げ 甲板機器仕上げ作業(開放・分解・修理・復旧) 荷役装置仕上げ作業(開放・分解・修理・復旧)    
機関仕上げ 主/補機・軸系ポンプ類検査・開放 主/補機・軸系・ポンプ類修理・組立・据付    
機械加工 修理品の機械加工      
配管(銅工) 配管修理 管加工 管取付・溶接  
木工 船倉内木ぎ装(ボトムシーリング、サイドスパーリング、 木工品修理 木工品据付・固定  
保温・防熱 倉内・糧食庫保温・防熱・保冷工事 ボイラレンガ工事    
左官 タイル・セメント・ラテックス等床・壁舗装作業      
船具 船具索・アンカーチェーン修理・整備 船底プラグ開放・復旧    
電気 電装品の検査・修理 航海計器の検査・修理 制御機器の検査・修理  
掃除 船倉タンク内掃除 工事箇所掃除 機関・各種置きタンク内掃除・陸揚げ 廃棄物処理作業
クレーン運転 クレーン運転 重量物運搬設備(フォークリフト等)運転    
運搬 修理部品の陸揚げ・積込      
足場 足場架設・撤去      
船渠 入出渠・離接岸 タラップ取付・取外し 陸電供給作業  
安全・保全 工場内設備保守点検 工場内設備整備・修理作業    








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION