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1.3 協力会社の立場
 さて、発注する造船所側に対して、受注する側、主として構内の協力会社側にたって考えてみたい。
 発注する造船所側の経済環境から、協力会社側には次のような圧力がかかっている。
[1] 作業を分割せず、一括丸投げ外注により、工程、品質上の責任も併せもたされつつある。
[2] にもかかわらず、船価を反映して、発注単価は低下傾向
・  したがって、手待ちロスをさけるため、受注側としても、複合職化を推し進めざるを得なくなっている。
・  一方、発注側は即戦力を条件にするが、ベテラン技能者だけでは経営が成り立たないので、素人工(先手)を適当に混在させて、総費用を抑える手段をとっている。
・  この結果、技能向上や生産性向上に対する熱意が冷めつつある。
協力会社における賃金統計は手元にないが、参考までに本会会員会社従業員の基準内賃金の推移を図1.5に示す。図から分かるように、発注側の造船所の賃金は、この6年間、勤続年数、平均年齢が(若干ではあるが)上昇しているにもかかわらず、ほとんど横ばいで推移している。
[3] 複合職化によって、一方では、公的資格・免許取得の支援や受講義務を課された技能講習への派遣など、雇用に付随する費用が増大し、経営を圧迫しつつある。このことが定着率が不明な新卒者より、即戦力としての経験者の採用を優先する要因となっている。
[4] 技能レベルの客観的な判断が、複合職化により、ますます困難になりつつある。例えば、溶接職を例にとると、主体作業の技量が良くても、玉掛技能資格がなければ、技能レベルを総合的にどう判定するか難しい。
 なお、コストダウンの観点から、外国人研修生採用に対する期待(要求)も高まっている。ただし、研修生受け入れに伴う宿泊施設の提供、生活・健康管理、座学時間などの問題もあり、外国人研修生がコストダウンに直接寄与するかどうか、さらには長期の不況で失業率が上がっていることから、研修生がこれまでのように許可されるかどうか疑問視する意見も多い。
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図1.5(1) 基準内賃金の推移(普通会員)
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図1.5(2) 基準内賃金の推移(賛助会員)








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