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QE2の船医は、安全局の調査員が到着するまで、資料をどう処理するのか、指示を受けていなかった。安全局の調査員は、独自の毒物検査のために、資料のうちの一組を安全局に渡すように要求した。その資料は、QE2の船医から引き渡され、その後、直ちにユタ州ソールト・レイク市にある、人体に関わる毒物研究センター(CHT)に送られた。CHTでの安全局向けに行われた検査では、資料から低レベルのカフェインを検出したが、その他の薬物の検出はないと報告された。アルコール検査が行われなかったのは、資料採取が39時間も後であったことによる。キューナード社向けに、ニュー・イングランド州のMETPATH研究所で行われた船橋当直者の薬物とアルコールについての検査結果では、いずれについても検出されていない。

 

旅客に対しての調査

安全委員会は、事件発生時に乗船していた1,824人の旅客のうち529人に事件についての質問書を送付した。応答した240人の意見を要約すると次のようになる。

●大多数の応答者(約80%)が、事件は21時30分か22時00分の間に発生したとしている。

●応答者のほぼ65%が、船体の動きに軽度ないし中程度の変化があったと感じている。三分の一の人が、衝撃は大きかったと思っている。

●応答者のほとんど全員が、最初の情報は船長によって発せられたとし、少数の応答者(1%)が、自室のテレビジョンのCNNニュースを見て知ったとしている。

この調査に応じた一人の女性聴覚障害者が、事件発生時、何かの異変を感じても、船内放送を聞き取ることができなかったと不満を述べている。彼女が、情報を得ようとしてテレビジョンを入れ、文字放送の装置がないことを知ったのである。

●応答者のほとんど全員が、事件直後に、“船橋当直者である。”と名乗った誰かが、“乗客の皆さん。本船は、存在不明の水中障害物に衝突した模様です。船体には、明らかな損傷は出ていません。心配はありません。本船は、全く安全です。”との船内放送を行った、と記している。

●多くの応答者が、かなり経ったとき、旅客には危険がないこと、次の日に下船となることを船長から知らされたと答えている。

●安全委員会の調査に応答したほとんど全員が、下船は安全に遂行されたと考えているが、応答者の5%は夜間の下船は安全でなく、次の朝まで待つべきであったと思っている。

●どの応答者も、事件の間、または、続いて起きた下船騒ぎの間に負傷者が出たのを見ていない。

 

 

 

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