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ノース・イースト・マリーン水先人組合は、連邦薬物検査規則の求めるところに従って、随時あるいは事件関連、または強制薬物検査を実施させるため、ニューポート勤労者健康組合(NABH)に一組合員として永く参加してきた。QE2の水先人は、同水先人組合に所属しているので、会員として年会費を払っている。

MSDケープ・コッドから派遣されたコースト・ガードの訪船調査員は、8月8日11時00分ごろ、本件について水先人と話合い中、同水先人に対する薬物検査を本船において実施するために、NABHの看護婦が来船することになっていると、水先人が言ったと証言した。コースト・ガードの調査員は、プロビデンスにある海上安全局(COMSO)の事務所において上司にこの件の話をしたところ、乗揚事件発生時の船橋航海当直者に対する薬物検査の資料をそのNABHの看護婦に要請して受け取るよう指示された。

この看護婦は、水先人だけについて検査をするようNABHの指示を受け、三個の尿検査用器具を持って本船に赴いた。水先人、船長そして当直中の一等航海士の3人だけが検査を受けたのである。検査資料は、事件後約16時間経った8月8日14時20分ごろに各人から採取された。NABHがいつも依頼する、ペンシルバニア州のスミスクライン・ビーカム・クリニカル研究所で、3人の資料について薬物検査だけ(アルコール検査は行っていない。)が実施された。

COMSOが毒物検査を受けるための条件を知らされてから、訪船調査員が、事件処理の次の手続をどうするかを決めるため、船体損傷調査の潜水夫とキューナード社の責任者との話合いに出かけた。その節、船長は、コースト・ガードに対して残されている旅客を上陸させるために、ニューポートに近いところに移動する許可を出すよう要請した。コースト・ガードは、この要請を聞き入れ、その許可によって、事件当時に船橋内にいた運航関係者も、旅客を上陸させるための作業に従事するようになったので、残りの3人の船橋当直者は、遅くまで薬物あるいはアルコール検査を受けられなかった。

8月9日08時00分ごろ、QE2上でのコースト・ガードとCOMSO係員との相談のあと、乗組員の作業が次第に落ち着いてきたので、残っていた船橋当直者3人の毒物検査資料の採取が行われた。しかしながら、訪船調査員、船長それにQE2の上席船医は、乗組員の08-12時当直が終わってから資料採取を始めることで同意した。乗り揚げてから、おおよそ39時間過ぎた13時30分に当直二等航海士、操舵員と甲板手は、船内の病室に出向き、そこで看護婦が、それぞれからガラス管二本づつを採血した。このガラス管は、二個のコンテナーに密封されて冷蔵された。コンテナの一個は、コースト・ガードの検査用に当てられ、他の一個は、検査のためにキューナード社に委ねられた。資料に関して、コースト・ガードの責任者は、本船の船医にそれ以上の精しい指示を出さなかった。

 

 

 

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