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ところで、このY氏のメンタル・プロブレムはその後もしばらく続いていましたが、あることをきっかけにまるでうそのように治ってしまいました。それはY氏が所属している研究所の現在の上司の一言がきっかけでした。「だいぶ苦労をかけたな、悪かったな」といわれたのです。

Y氏が今回のプロジェクトに参加することを決定したのがこの上司だったのですが、だからといって、このことをもと上司が謝らなければならないことではありません。しかし、プロジェクトの経緯のことを最もよく知っているのはこの上司であったのも事実です。

しかも、それから半年余りも心身の調子を崩して苦しむY氏を見てきたわけです。部下の心中を思う気持ちを言葉に表したのでしょうが、Y氏にとっては「自分の力になってくれようとしている上司の一言で報われたような気持ちになり、この問題を割り切ることができた。」といいます。

この先の自分はどうなるかという不安はあるが、心の傷になったことを自分なりに受け入れ、とにかく経験を積むことにメリットがあるんだと感じるようになりました。また、気分に左右されないように目的意識を明確にしておくことが大事だということや、どんな状況になっても「自分が働かされているという気持ちになったらだめだ」と気付いたといいます。

 

ケース2 評価面接で求められるカウンセリング・マインド

専門知識も豊富で優秀な、ある中間管理職の男性が初めて、新人の部下を持ちました。ところが、彼は電子メールでしかコミュニケーションできないのです。部下は悩んだ揚げ句、ついに希望を出して異動してしまいました。

 

「上にばかり気を遣う上司に査定されることになった」

「おおげさでなく、部下は上司によって生きるか死ぬかが決まることを思い知らされました。こういう場合に二つに一つの選択をしている人たちが多くいます。とてもやってられないとやる気を失ってくさってしまうか、それとも強いものにはとことん迎合して認めてもらうか、のどちらかです。

 

 

 

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