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以上のような薬物・銃器事犯を阻止するためには、外国関係取締機関との連携の強化を図ることが重要となってきている。このため、平成12年1月には、「薬物海上取締官養成セミナー(MADLES2000: Maritime Drug Law Enforcement Seminar 2000)」が開催され、東アジア、東南アジアの9カ国から薬物取締官が参加し、UNDCP(国連薬物統制計画)の「海上薬物取締トレーニングガイド」に基づく実習、情報交換、地域内の協力について検討が行われた。

密輸出入事犯は、輸入される側と輸出する側とが緊密に連携・協力して取り組んでいくべき問題である。上記のようなセミナー等を通して、関係国の取締官の能力を向上させることにより、当該国における密輸出入事犯の防止・摘発能力が向上することは非常に有効であり、本セミナーの参加者による人的なネットワークの構築も極めて重要であると考えられる。

 

4. 外国からの抗議活動

平成8年7月、国連海洋法条約が我が国について発効した後、日本の排他的経済水域の設定に伴う漁業活動への影響を不満とし、また、尖閣諸島北小島に日本の団体が灯台の用に供する構造物を設置したことに対する抗議として、台湾・香港等で「保釣活動」と呼ばれる領有権主張の活動が活発になった。

同年8月下旬以降、抗議や報道目的で、台湾小型船舶が同諸島領海内に侵入する事案が多発するとともに、それ以後も、活動家1名が抗議行動中に溺死する事案、活動家4名が魚釣島岩礁に強行上陸する事案、活動家2名が巡視船に飛び移る事案、抗議船「釣魚台号」が領海内に侵入、船体放棄・沈没する事案等が発生した。現在、抗議活動は沈静化しているが、引き続き、事案の推移を注意深く見守る必要がある。

尖閣諸島における活動家による一連の抗議活動は、領有権主張が主目的というよりは、領有権主張に名を借りた活動家による一種の売名行為的な意味合いが強いものであったとされている。尖閣諸島は、中国や台湾もその領有権を主張しており、今後、また、どのような形で同様の抗議活動等が発生するのか、予断を許さない状況にあると言える。

 

 

 

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