5. 北朝鮮問題
北朝鮮は、東アジアにおける政治的、経済的不安定要素の最たるものである。我が国は北朝鮮との間に国交がないことから、北朝鮮の政治体制、軍事力、産業、経済規模、国民の生活レベル等の詳細については依然深いベールの中にある。しかしながら、平成10年8月、北朝鮮が何ら事前の通報なく我が国上空を通過するかたちで弾道ミサイルを発射した事件、平成10年12月、北朝鮮の工作船と思われる不審船が韓国海軍により銃撃された事件、平成11年3月、能登半島沖に不審船2隻(北朝鮮の船という証拠はない)が出現し、海上保安庁の巡視船・航空機等による追跡を振り切り、日本の防空識別圏外に逃走した事件等今後とも我が国周辺海域の安全に対する重大な脅威となっていることは否定できない。
6. 我が国シーレーンの安全確保
我が国は、四面を海に囲まれた貿易立国であり、特に、海上輸送ルートの安全確保は我が国の死活にかかわる重要な問題である。我が国の主要な海上輸送ルートは、西は東南アジア海域を通り湾岸地域、スエズ運河まで、東は、北米航路等、極めて広範囲に及んでおり、海上保安庁のみではこの長大な海上輸送ルートの安全確保を図ることは困難である。このため、当該海上輸送ルート沿岸国の海上保安機関との連携・協力を図り、必要に応じ、当該機関に対し技術的支援を与え、地域としての海上保安体制の総合力を向上させることが極めて有効である。
とりわけ、東南アジア海域は、海賊及び武装強盗の頻発地域であり、実際、日本人乗り組みの貨物船が襲撃を受けるなどの被害が発生している。このような事案に効率的に対処するため、当該地域の海上警備機関との連携・協力を強力に推進している。
7. 世界測地系海図への移行
これまで、海図の作成にあたっては、我が国独自の基準である「日本測地系」が使用されてきたが、人工衛星の観測に基づく「世界測地系」へと国際的に統一されつつある。日本独自の基準から国際的な基準への移行は、海図の世界のみならず、これまで様々な分野で古くから行われてきたが、海上保安庁でも、この流れを受け、海図の測地系を世界測地系へと順次移行していくこととしている。