一方、密航者の中に、日本での強制労働や性的搾取等を目的として犯罪組織により無理やり連れてこられる児童(18歳未満)が含まれている場合、その取扱いには十分な注意を要する。このような場合、これらの児童に対しては、保護すべき対象として当該者の人権に配慮し適切に取扱う必要がある。万が一不適切な取扱いがあった場合には、我が国のみならず、世界中の人権擁護団体等から非難を受ける可能性もあり得る。
以上のような密航事犯を阻止するためには、確度の高い迅速な事前の情報の入手が重要である。このため、外国の関係機関と緊密に連携し、密航情報の共有化を図っていくことがますます重要になってくると考えられる。
(2) 薬物・銃器事犯
我が国で不正に用いられている薬物・銃器のほとんどは船舶等を使用して海外から密輸入されていると考えられている。また、特に薬物については、暴力団等が組織的に相当量を我が国に密輸入しているものとみられる。我が国における薬物乱用の増加、銃器の一般社会への浸透等は、社会の安全・安定を根本から揺るがす大きな問題となっている。
薬物は、非常に少量にもかかわらず、末端の取引価格は非常に高価なものである。日本に来る薬物は、中国、北朝鮮等から密輸入されており、薬物の流れとは反対に、かなりの額の資金が当該国に流れ込んでいると考えられる。薬物の問題も、密航事犯と同様、密輸出国の経済問題や貧困問題等が根本にあると考えられ、簡単に解決できる問題ではないと考えられる。