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このように、国境という垣根が低くなると、当然、貧しい国から豊かな国へと人の流れが生じ、この中には、旅券等の有効な身分証明書を有しない、また、適切な出入国管理手続を経ないで出入国をする者が含まれる結果となる。また、銃器等の国境を越えた密輸も容易に行われることととなり、グローバル化のマイナス部分の影響が見過ごすことができない状況になっている。

以下に、国際犯罪(密航事犯及び薬物・銃器事犯)への海上保安庁の対応について見てみることとする。

(1) 密航事犯

日本への不法入国者(助長者等を含む)の大多数は中国人であり、経済大国日本での一攫千金を狙ってやってくるものである。一時期に比べ、最近は大幅に減少する傾向にあるものの、日中両国及び韓国等の近隣国の相対的経済状況に影響されるところが大きく、今後も注意深く推移を見守る必要がある事案といえる。

不法入国者の国籍については、先にも述べたが、現在、中国人が大多数を占めている。しかし、東アジア地域の中にも、政治的かつ経済的に不安定要素を抱える国があり、そのような国からの難民等の大量流出の可能性も否定できない状況である。

 

不法入国事件検挙件数(海上保安庁取扱い)

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出展:平成12年海上保安の現況他

注「未然防止件数」とは、我が国向けの密航船及び密航の疑いがある不審船を日本近海の公海上で発見し、巡視船で追尾して追い返す等の未然防止策を講じた件数を指す。

 

密航事犯は、密航者の送出国の経済問題や貧困問題等が根本にあり、また、国際的な犯罪組織がビジネスとして関与していると考えられ、簡単に解決できる問題ではない。密航事犯を撲滅するためには、送出国における対策の強化が極めて重要であると考えられ、平成12年の不法入国事件検挙件数が減少した理由として、送出国における取締り強化、予防啓発活動の実施が功を奏したと考えられている。

 

 

 

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