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しかし、これを一昨年までさかのぼってみると、「増やす方向」は、3.4%、5.5%、7.9%と徐々に増えており、「圧縮必要」は70%台、60%台、50%台と減少してきている。また、常用雇用者数は「変わらない方向」は本年は37.5%(昨年30.3%、一昨年26.2%)の回答であるが、これも増加傾向にある。これらの数値を総合すると、企業の雇用過剰感も少しずつ薄らいできてはいるものの、未だ雇用情勢の前途にやや明るさが見えてきたとまでいえる段階にはないと思われる。

ア. 企業規模別

「増やす方向」の回答はどの規模でも依然1桁台で、規模「5千人以上」は9%、その他の規模は7.8%であるが、「5千人以上」は昨年の5%から4ポイント上昇し、「千人未満」も昨年の2%から6ポイント上がっている。また、今後も「圧縮必要」と答えた企業は「1・2千人台」、「千人未満」でそれぞれ50%、49%で昨年(62%、57%)よりかなり減少している。「5千人以上」は71%の企業がまだ「圧縮必要」と答えているものの、昨年の80%からは10ポイント程度低くなっている。「変わらない方向」は3千人以上で20%台、3千人未満では4割台で昨年と大差はない。

イ. 産業別

産業別にみると、業績の回復が比較的早いと思われる「卸売・小売業、飲食店」は、「増やす方向」が18%と昨年の14%を上回り、「圧縮必要」とする企業も49%(昨年55%)と50%を割っているのが目につく。他の産業では「圧縮必要」と回答した企業がいずれもなお5割を超えているものの、数値的には「農林漁業、鉱業、建設業」で微増している以外は昨年より低くなっている。個々の会社についてみれば、「増やす方向」と「圧縮必要」のどちらかに分かれるわけであるが、大勢をみるためにグループにして集計すれば余剰人員を抱えている企業がまだ多数を占めているということになろう。

 

2. 非常用雇用者数の増減状況

わが国経済が長期にわたり停滞し、企業は人件費の削減をはじめとするリストラに取組み、常用雇用者、つまり正社員の圧縮に努めていることは今まで見てきたとおりである。そしてその補充として、パート、アルバイト、派遣労働者などの非常用雇用者を雇うことが多くなっている。総務庁(現総務省)、日本経済新聞の調査によってもこの種の労働者が急速に増加しているとされているこのような現状を調査ではどのように捉えられているのだろうか。

(1) 非常用雇用者数の過去1年間の増減状況〔第3・4表参照

平成11年10月から平成12年9月の1年間に非常用雇用者を「増やした」と回答した企業は29.9%で、昨年の21.8%より8ポイント増え、これに対し「減らした」とする企業は昨年の31.5%から18.8%へと大幅に減少した。一昨年、昨年は非常用雇用者を減らした企業の方が増やした企業より多かったが、今回はそれが逆転し、増加が減少を約10ポイント上回り、企業の非常用雇用者の需要の強いことを裏付けている。また、「おおむね変わらない」の回答も45.1%(昨年41.7%)あり、常に一定数のこれら従業員を雇用している企業が半数近くあることが分かる。

 

 

 

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