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3. インターネットを通じた無店舗販売の進展に伴う対個人物流の変化への対応

(1) ネット通販業者における物流への取り組み

1] インターネット上で通信販売サイトを運営する業者

インターネットによる通信販売サイトの運営者(もしくはインターネットを通じた通信販売を専業とする業者)においては、商品の配送を宅配便業者を中心とする物流業者に一括して委託(アウトソーシング)する傾向がみられる。

東京の大手インターネット業者X社は、自社通販サイトで取り扱う商品の集荷・配送を大手物流事業者に全面的に委託している。当初、販売体系を地域単位に分割してそれぞれ配送体制を構築することも検討されたが、最終的には物流業者のノウハウに一任することが最も効率的との結論に至った。

また、東京の大手インターネット業者P社は、宅配業者に商品の配送を委託している点ではさきにみた例と同様であるが、特定の物流業者と提携するのではなく、商品購入者が利用する宅配便業者を提携29社の中から選択できるシステムを採用している。これによって、商品購入者にとっては自分のニーズに合ったサービスを提供してくれる業者を選択できるメリットがあり、またネット通販サイトの運営者としても、複数の宅配便業者を利用することでコスト上昇を回避できるメリットを期待できる。

 

【ネット通販サイトを運営する業者の事例】

■東京に本社を置く大手インターネット業者(X社)

・通信販売サイトを立ち上げた目的は、個人による多様な商品販売を通じてより細かい商品購買ニーズに関する情報を蓄積し、これをマーケティングリサーチのツールとすることである。従って、必ずしも物流システムとしての優位性を確立することが第一義的な目的ではない。

・物流については、集荷・配送を大手の物流業者と提携しており、一定の在庫がある場合についても同社の倉庫を利用している。

・通信販売事業に共通する問題として、物流のトレースが難しい点やロットが小さいといった点があるが、当初は当社でも販売体系の地域セグメント化について検討した。その結果、当社の結論として、物流については物流業者のノウハウに一任することが最も効率的と判断し、上述のように大手物流業者に全面的に委託することとした。

・近い将来に電話回線料が低価格化することが予想される中で、今後インターネットを介した通信販売事業は、配送コストなどサービスモデル間の格差が浮き彫りになり、消費者もより厳しい基準でサービス選択することが想定される。

 

■東京に本社を置く大手インターネット業者(P社)

・当社に入った注文情報は、配送管理システムと在庫管理システムを用いて運送会社に集荷・配達指示を出す。運送会社は集荷・配達を行い、その完了情報や在庫情報を再び提携会社を通じて出店者に還元する。サイバーモール向けの配送システムは各社が手掛けているが、これにWEB在庫管理システムを組み合わせた点が新しく、ビジネス特許を出願している。

・配送対象は全国であり、温度管理の必要な生鮮品なども対象となるため、自社配送網でカバーすることは不可能であり、配送業務はすべて宅配便業者に委託する。

・また、利用する宅配便会社を選択できるようにした点も新しい。これは、家族の勤め先などに応じて、利用する運送会社を選択したいというニーズや、地域によって異なる運送会社の強みといったものに対応できるというメリットがある。

 

 

 

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