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(3) 利用者の視点に立ったバリアフリー化

バリアフリー化は、高齢者・身障者等が利用しやすくなることが本来の目的であり、そのためには、高齢者・身障者等の利用者の視点に立ったバリアフリー化を実現することが重要である。このため、バリアフリー化への取り組みに際しては、「移動円滑化基準」等の法制度に適合することだけを目標とするのではなく、それを最低限の対応と位置づけ、高齢者・身障者等の利用者のニーズを十分に踏まえつつ、取り組んでいく必要がある。

その際には、個々の施設がバリアフリー化されていることに加え、移動経路がわかりやすい、移動経路が短いといった点も含めて、「利用者へのやさしさ」に配慮することが重要と考えられる。この点に関して、「公共交通ターミナルのやさしさ指標」を策定した「バリアフリー度評価基準作成のための調査研究事業報告書」(2000年2月、交通エコロジー・モビリティ財団)では、「やさしさ指標」の考え方として、以下のように整理している。

 

1) 移動のしやすさ

移動経路の短さとわかりやすさ、水平移動のしやすさ、垂直移動のしやすさ

2) 案内情報のわかりやすさとソフトの充実

適切な案内情報の提供、内容・表示のわかりやすさ、見つけやすさと位置の適切さ

安心と信頼を生む人的サービス

3) 施設・設備の使いやすさ

利用者の快適性を向上させる施設・設備の設置、近づきやすさと操作のしやすさ

 

上記の項目のうち、「移動経路の短さ・わかりやすさ」「案内情報のわかりやすさ・見つけやすさ」等は、「移動円滑化基準」では必ずしも明示的に規定されていないため、バリアフリー化を進める際、ともすれば見落としやすい項目と考えられる。しかしながら、これらは、旅客船ターミナルや船内の施設配置計画における動線の最短化・最適化など、健常者も含めた「利用者へのやさしさ」の実現において、極めて重要な点である。

 

(4) 高齢者・身障者のさまざまな移動特性・ニーズに配慮したバリアフリー化

高齢者・身障者における移動の制約は、年齢や障害の種類・程度等によって多様である。

表2に示すように、乗下船、船内での体調管理・トイレ、港までのアクセス、係員の対応は共通して改善ニーズの強い分野であるが、肢体不自由者では、主に段差等の物理的障壁が問題となるのに対し、視覚障害者では誘導・点状ブロック等の情報提供が重要な点である。また、聴覚障害者では船内係員への依頼のしにくさ、内部障害者では船内での体調管理・トイレが特に問題とされている。高齢者も船内の体調管理・トイレに対する不安が大きい。

バリアフリー化を進める際には、こうした特性や各地域の利用者ニーズを踏まえ、きめ細かな対応を行っていく必要がある。

 

 

 

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