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その研究の一環として、現在地球環境問題で注目を集めている二酸化炭素を中心に、それと関係するキーワードを抽出し、それらの相互関係を3次元空間で見ることができるようにした[図1及び2]。ところで、二酸化炭素CO2は気体成分である。水中ではCO2以外にHCO3-(炭酸水素イオン)やCO32-(炭酸イオン)の形になって溶解している。一方、固体の二酸化炭素はドライアイスと呼ばれるが、自然条件では安定でない。また、水H2Oと結合して二酸化炭素水和物を形成するが、これも10℃以下の低温で安定で、天然物では流体包有物を冷却したときにしか現れない。

CO2が固相の主成分となって自然界に存在する場合は、必ず炭酸塩を形成している。その代表的化合物は炭酸カルシウムCaCO3(鉱物名は方解石と霞石)である。自然界に存在する炭酸塩の90%以上、恐らくは99%以上がこの形である。それ以外にはドロマイトCaMg(CO3)2、菱苦土鉱MgCO3、菱鉄鉱FeCO3、菱マンガン鉱MnCO3など、アルカリ土類元素あるいは遷移元素との化合物が一般的である。

以上の理由により、自然界における二酸化炭素を考える場合、気圏と水圏を合わせた流体圏ではCO2そのものであるが、固体圏も対象とする場合CaCO3を含めておく必要がある。

 

2. 方解石と霞石

炭酸カルシウムCaCO3の結晶には方解石と霞石がある。前者は六方晶系で、後者は斜方晶系である。このように化学組成が同じで結晶構造の異なる関係を同質多像という。

炭酸カルシウムを沈殿させる実験は容易で、しかも安全なため、ほとんどの人が小学校か中学校で見ているはずである。カルシウムイオンを含む水溶液に息を吹き込むと白い沈殿が生じる。これが炭酸カルシウムである。

炭酸カルシウムを加熱すると、

CaCO3→CaO+CO2↑ (1)

という反応により、二酸化炭素が逃げ、生石灰(せいせっかい)CaOが生成する。なお、生石灰は学術用語で、通常は石灰と呼ばれている。生石灰が水和すると消石灰(しょうせっかい)Ca(OH)2が生成する。その反応は、

CaO+H2O→Ca(OH)2 (2)

と書ける。生石灰にしろ、消石灰にしろ水によく溶け、

CaO+H2O→Ca++2OH- (3)

という反応で、カルシウムイオンと水酸イオンに分かれる。

 

 

 

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