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二酸化炭素を水に溶かすと、

CO2+H2O・H++HCO3- (4)

HCO3-・H++CO32- (5)

という反応で、炭酸水素イオンや炭酸イオンが生成する。なお、上の2つの反応では水素イオンが生成するので、二酸化炭素の溶解した水は弱酸性である。ウィスキーの炭酸水割り、つまりハイボールに使う炭酸水が少し酸っぱいのはこのためである。カルシウムイオンと炭酸イオンあるいは炭酸水素イオンが会合すると、

Ca2++CO32-→CaCO3↓ (6)

Ca2++HCO3-→H++CaCO3↓ (7)

という反応で、炭酸カルシウムが沈殿する。これが先に見た学校での実験である。常温・常圧の条件では熱力学的に籔石より方解石のほうが安定なため、上記の反応で生成する鉱物は方解石である。

カキ、二枚貝、珊瑚、ウミユリ、有孔虫など生物は、水中に溶解しているカルシウムイオンと炭酸水素イオンと使って、その石灰質殻を合成している。このとき、ある種の生物は熱力学的に不安定な霞石を合成する。その代表が真珠である。この種の生物は、溶液から霞石が生成するときの活性化エネルギーを下げる触媒の働きができる。事実、生体で生成される炭酸カルシウムが霞石であるのは、現世および新しい時代の化石に限られ、通常は生体起源であってもすべて方解石に変っている。

霞石は方解石に較べて高圧の条件で安定である。このため、無機的条件で霞石は変成作用で生成する。

 

3. 地球環境の変化

約45億年前に固体地球が形成された。その後、地球内部からH2O、N2、CO2などが地球表面に移動して、流体圏が形成された。この流体圏はH2Oを主体とする水圏と、N2やCO2を主体とする気圏に分かれた。ただし、反応(4)や(5)により、かなりの量のCO2は水圏に溶解していた。生物が発生して光合成が行われると、

6nH2O+6nCO2→(C6H12O6)n+6nO2 (8)

という反応により、生物はその体を形成した。ここで、(C6H12O6)、は生物体を簡略化して表現した化学式である。この反応により流体圏の二酸化炭素が消費された。さらに、生物が進化して、殻や骨をもっ種が現れると、反応(7)により、流体圏の二酸化炭素が消費された。この結果として、現在の大気や海洋のように、流体圏の二酸化炭素量が少なくなった。

 

 

 

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