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2-3-8 サンゴ礁研究諸局面の整理学

 

1. サンゴ礁研究の発祥

チャールズ・ダーウィンのビーグル号による世界一周航海がサンゴ礁研究にとって意義深い出発点となった。それはサンゴ礁の成立を論じるにはただ単に生物学的側面だけではなく、地質学〜地史学的観点が基本になければならないことを示唆しているからである。

サンゴ礁についてのその後の研究は、むしろ生物の多様性を明らかにするための分類学的側面に多大の努力が払われる事態が長く続いた。戦後、核兵器保有国の激しい核爆発実験競争が始まり、太平洋の孤島での基盤にまで達するボーリング調査によって、礁形成のタイミングや環境変化の様子も見えてきた。

 

2. 生態学研究の展開

サンゴ礁環境、ひいては過去のサンゴ礁の古環境を研究するには、動・植物相のみならず地勢や気象・海象を含めたトータルな自然界のバランスを確実に捉える必要がある。マングローブ研究は、決して淡水流入河口周辺での植物界事情としてだけ理解されるのでなく、サンゴ類の生息不適格環境での生物の補完的な適応形態と受け止めることが肝要であろう。つまり、暖水域における諸環境としてサンゴ礁やマングローブ森を理解しなければならない。

水中生態学は、陸上のそれに比していくつものハンディが有り、浅所とはいえサンゴ礁域は地形の複雑さもあって研究展開におくれがある。マイクロバイアルや化学的要件に注目したサンゴ礁研究は、これまでそう多くはない。広い意味での魚付林的視点に立ってみることも必要となろう。

 

3. 地球環境問題時代を迎えて

人類文明の急激な発展は、ヒト自身が全く気付かぬ中でマイナスのインパクトを地球自然に対して与えてきた。これにようやく気付かされたのが、CO2ガスの大気中での確実な漸増傾向がハワイで観測された事件であった。

産業革命以来、ヒト社会での大量の化石燃料消費と、それに見合ったCO2ガスの大気中への蓄積が、ここに至って温室効果へ現実に結びつくおそれが出てきた。そのCO2濃度をいかに下げるかについて、一方では自然界における植物界の同化作用に期待し、他方では実効は薄くとも技術的に排出規制をとることで対応しようとしているのが今日の事態である。

 

 

 

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