熱帯多雨林でのCの固定能やサンゴ礁あるいは低水温海域におけるプランクトンによるC固定作用の検定が必須である。いずれのケースについても確かな見積もりはまだ得られておらず、サンゴ礁については、化学系と地質学系の研究者間で骨格形成に参与したCの評価に関して合意に至っていない。
4 広域研究としての海洋科学
要素還元型思考は、近代科学の成立の中で一つの大きな成果を残しっつ、他方では複雑系〜複合系研究をおくらせる一因ともなっている。サンゴ礁研究は、地球上最高の水中生態系であることを、いままさに複雑・広域の研究テーマとして理解する必要がある。加えて人為的な難分解物質の流入や油汚染などもからみ、人文社会学的側面をも十分に加味した対応が嘱望されているといえよう。
サンゴ礁研究は単なる熱帯表層水環境の問題にとして捉えられる時代は過ぎた。深層水が礁発達に大きく寄与していることや、過去において炭酸塩岩形成が石油貯留と密接な関係をもつこと、エル・ニーニョやラ・ニャーニャ現象がサンゴ礁の著しい白化につながる様相など及ぶところは多く広域にわたる。
サンゴ礁学会はそうした現代的課題についての国際的活動の場となることを目標にしなければなるまい。研究アイテムの相関を整理する事によって、そのアプローチが見える。