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たとえば表─1に見られるように、北部地方においては、社会や文化のあらゆる側面において結晶化が進み、“中国”的特徴が認められる。これに対して、南部地方においては、それらの結晶化の程度は相対的に低く、“東南アジア”的要素が濃厚に残っている。

このように、ベトナムに対する漢族の“陸路”を中心とした侵略による中国文明の影響は、北部地方を中心に根深いものがあった。しかしながら、それは一点集中的であり、インド文明の“海路”による伝播のように面を覆うことはなかった。

表─1 ベトナムの社会文化の特徴

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注)本表は、真保潤一郎、高橋保『ベトナム』現代アジア出版会(1971)にもとづいて、作成したものである。

 

(5) インド文明の海路による伝播

前述のセデスによれば、東南アジアヘのインド文明の影響はインド化と呼んでいる。それは、インド文明がばらばらに導入されたのではなく、土着の支配層がおもにインド商人たちの手を通して、インド文明をセットとして受け入れたものと考えられる。かくして、東南アジアの広い地域において、古代国家の種が撒かれたのであろう。そのインド文明の主要な要素とは、次の五点に要約されよう。

1)サンスクリトを文明語として受容

2)文字、文学

3)王権思想

4)法思想

5)宗教(大乗仏教・ヒンドゥー教→上座部仏教)

 

 

 

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