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また、中、高ともに、新たに「総合的な学習」と称する授業時間を週2時間設けると決め、現在、多くの教科、科目にまたがっている「環境とエネルギー」をまとめて扱うのが好例としているが、それは確定的なものではない。むしろ、多種多様の授業実践を期待するとしているので、これに乗じるのが得策に思える。

 

2-3-3 古環境科学と現在の海洋環境

古環境を推定する方法は、地史学、古生物学、堆積学などの分野で古くから研究されてきた。これは地学の最終目標の1つである地史、すなわち地球誕生から現在の姿に変化してきた地球の歴史を編むためのなくてはならない作業であった。研究方法は、大きく2つに分けられる。1つは、化石を研究し、その化石が示す古生物の生息環境を明らかにし、化石からわかる年代とともにその地域の当時の環境を推定していくものである。もう1つは、堆積物(堆積岩)をよく観察し、堆積物の粒度や組成、形、また堆積構造などからその堆積物が堆積した環境を推定していくものである。

前者の化石から古環境を推定する方法では、現在の生物の生息環境を1つの基礎資料として化石(古生物)の生息環境を推定していくのが基本であるが、現在の生物とかなり異なる古生物の場合、推定根拠が現在の生物からの資料だけでは不十分である。この場合は、化石が産出された地層、すなわちその地層をつくる堆積岩(堆積物)のデータ(後者の方法)を加味して推定されることになる。

後者の場合は現在堆積しつつある各種の堆積物の性質と比較することにより、過去の堆積物の環境を推定するという方法である。堆積物は海、川、湖等に堆積する場合がふつうであるが、そのうち海洋に堆積する場合が圧倒的に多い。そこで、古環境を推定するには現在の海洋環境を研究する必要がある。最近の海洋環境が急激に変化しているとすれば、それは古環境を推定する基本的根拠が崩れてしまうことになるので、大変由々しき問題である。

 

1. 化石からの古環境の推定例

どんな化石からもなんらかの古環境は推定できるのだが、ここでは浜名湖の古環境の変遷について行った研究例について述べる。

名湖の湖底や周辺の数点(浜名湖の水面とあまり落差のない現在田んぼになっている所)でボーリングし、コアー中の化石、特に有孔虫やオストラコーダを分析すると、過去浜名湖は何度も淡水湖になったり、汽水湖になったりしていることがわかった。これは、淡水、汽水、海水に棲む有孔虫やオストラコーダは各々異なっており、また水深や水温ごとに生息する種類も異なることから推定できる。

 

 

 

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