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したがって、アルゴマ型とスペリオル型の違いを生じた原因の1つとして、35億年前から20億年前の間に地球大気の酸素分圧が上昇したことが考えられる。しかし、アルゴマ型鉄鉱層の鉄の供給源については、上述した岩石の風化ではなく、海底の熱水活動によるというモデルが提唱されている。縞状鉄鉱層の細かい縞の繰り返しは、季節変動を反映しているというモデルが提唱されている。このモデルでは、海中微生物の活動が夏と冬という季節で変動するので、これが鉄の沈殿と石英の沈殿の繰り返しの原因であると考える。いずれにしろ、このような鉄鉱層は海洋で生成したものであり、その成因の解明には海洋における生物地化学的研究が不可欠である。

アフリカの中央部、コンゴ(旧ザイール)とザンビアの国境地帯は、地層準に規制された銅鉱床が多数分布するため、「銅帯(Copperbelt)」と呼ばれる。この銅帯に分布する銅鉱床は、副産物としてコバルトを含む特徴をもつ。このため、世界におけるコバルトの需給バランスはこの地域の政治情勢に大きく依存している。鉱床の母岩は砂岩であるので、含銅砂岩と呼ばれる。鉱床は先カンブリア時代の海岸付近で生成されたと考えられている。コバルトは伴わないが、同様の含銅砂岩の鉱床が、カザフスタンのゼズガズガンにも存在する。ゼズガズガン鉱床の鉱化作用は、砂岩、シルト岩、粘土岩の互層、および灰色鉱化砂岩と赤色シルト岩および粘土岩からなる。これらの地層内には、2から6あるいはそれ以上の層からなる灰色鉱化砂岩と赤色シルト岩および粘土岩で構成される大輪廻が認められる。大輪廻の下部と中部の鉱化砂岩の堆積環境は潟─三角州盆地である。各大輪廻は2ないし3の中輪廻を含む。この中輪廻は下位の灰色鉱化層と上位の赤色シルト岩および粘土岩からなる。各中輪廻がそれぞれの鉱層に対応する。中輪廻内の灰色砂岩の粒度は、下位で粗粒から中粒、中位で中粒、上位で細粒から中粒、頂部で極細粒と変化する。これを小輪廻という。これらの産状は、この鉱床の生成に河川ないし海洋環境が大きく関係していることを示す。

中央ヨーロッパ一帯、大雑把には北は北海あるいはバルト海沿岸、西はエッセン、南はマンスフェルト、東はワルシャワの範囲に、含銅頁岩(Kupferschifer)が分布する。この鉱床は、現在の黒海の海底のような嫌気性の環境で、硫酸還元バクテリアの作用により、鉄の硫化物とともに黄銅鉱(CuFeS2)が沈殿したことにより生成したと考えられている。これなどは、特殊な海洋環境で生成した鉱床の好例である。また、この種の鉱床の研究結果は、東京湾などの陸に囲まれた内海の汚染の研究にも役立つ。

以上述べてきたことから明らかなように、海水および海産物、深海底のマンガン団塊、海山の富コバルトクラスト、拡大軸や背弧海盆の海底熱水鉱床、海洋底下のメタン水和物鉱床など海洋独自の資源はもちろん、大陸棚や純粋の陸域に分布が限られる石油、石炭、鉱物資源の鉱床も、海洋が存在しなければ、ほどんど形成されなかったと結論される。

 

 

 

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