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この意味で、各種鉱床の生成機構の解明とそれにもとづく探査、さらには資源量の評価と予測にとって、海洋科学的研究は不可欠である。

 

2-3-2 地球科学教育における海洋教材の取り扱いについて

戦後、わが国の中学校、高等学校の教育課程・学習指導要領は、ほぼ10年の周期で改訂されている。この改訂はいずれもその時代の社会的要請に適ったものといわれているが、理科の場合、その変容はあまりにも大きく、学習内容の構成に関する理念と教材の価値観を疑わせる。海洋教材の取り扱いの変遷を時代別に示すとつぎのようである。

 

1. 生活に直結した問題解決学習時代(中:1947〜1961年、高:1948〜1962年)

中学校の第3学年の理科に「海はどのように利用されているか」という単元があり、先ず身近な海水について理学的な基本事項を学ぶようになっていた。

1961年に中学校の理科教師になった筆者は、その年、広島県教育委員会のはからいで小型の練習船に乗り、海水表面温度の測定、海水の水色の観測、海水の透明度の測定、プランクトンネットを用いてのプランクトンの採集と同定、海流の方向の推測、冷水塊の存在の確認、そして海図の読み方の実習を受けさせられた。そして、この実習の成果を学習指導に活かすようにとの達しがあった。

この時代の中学校理科の内容構成には系統性は無い。貧しかった戦後の生活を向上させるために役立つことを学習させるのがねらいであった。理科の学習理論や指導理念の論議よりも実践が重視された。

高校には、1948年に、物理、化学、生物、地学の4科目が誕生し、生徒は1948〜1955年にはこの4科目から1科目を、1956〜1962年には2科目を選択履修した。その内容は中学校理科ほど生活寄りではなく、どちらかというと物理、化学、生物、地学の学問体系寄りであった。海洋に関する内容は地学で扱われ、海洋学をやさしく取り上げた感じであった。海水の物理性、化学性、海流、躍層の存在、海水の侵食・運搬・堆積作用、起潮力と潮汐などが扱われたが、海の生物は扱われなかった。

 

 

 

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