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有名なWoods Hole海洋研究所は大学の付属機関ではないが、プリンストン、エール、ハーバードなどの東部地区の大学の学生に海洋学の教育を行っている。これらの各大学から毎年、多くの若手研究者が巣立ち米国の海洋学の発展を支えている。一方、我国では海洋学部を有するのは東京大学海洋研究所と同じ年(1962年)に設立された東海大学(清水)のみである。

海洋学部では学部学生は4年間に海洋物理、化学、生物、地質学、水産学、航海学などを幅広く学ぶことができ、海に関する総合的な知識を身につけることができる。外国の研究者と討論すると生物学の専門家でも海洋物理、化学、地質学など他分野についても極めて造詣が深いので驚かされることがある。現在、日本で海洋の研究を行っている者は、大学、気象庁、海上保安庁水路部、環境庁、水産庁、通産省工業技術院、建設省港湾建設局、海洋科学技術センター、県の水産試験場、国立科学博物館、県立博物館、水族館などに勤務しているが、多くは水産学部、農学部水産学科、理学部生物学科・地質学科・地球物理学科・化学科・地理学科、工学部船舶海洋科学科・電気学科などを卒業している。このため本人が他学部、他学科の聴講などでよほど努力しない限り、学部、大学院時代に米国のような総合的な知識を習得する事は不可能である。日本の海洋学の発展のためにも海洋学部、海洋大学院の増設は今後の課題である。

 

水産学とは

人類の食生活とは切り離すことができないので、紀元前から存在しており、大きく魚介類を捕獲する漁労、育てる増・養殖、捕ったものを加工する製造の3分野に区分されている。「新水産学通論」(1977年)の著者、谷川栄一らは水産業を水産物を人類の生活に利用する産業とし、陸産物に対する呼称で、漁業、水産増養殖業、水産加工製造業からなるとしている。水産学は水産業の主流としている上記3業態について、その進歩発展を推進するための体系化された学問と定義した。日本では古来から漁業や増養殖に関する技術改良が行われてきたが、学問として体系化されたのは明治になってからである。明治8年に缶詰製造所が設立され、9年には那珂川でサケの人工艀化が試みられた。10年に勧農局に水産掛が設置され、15年に大日本水産会が設立され、20年に「日本水産捕採誌」、「日本水産製品誌」、「日本有用水産誌」の編纂が行われ、東京農林学校に水産学科(後の東京大学農学部水産学科)が設置され水産教育の設立を促すきかっけとなった。

 

 

 

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