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20世紀に入ると、エクマンが吹送流の理論を発表するころから精密科学としての特色をもちはじめた。第一次世界大戦後植民地を失ったドイツは新天地を海に求め、画期的なメテオール号大探検を南大西洋に展開し、海洋学の面目を一新した。我国では1908年に本多光太郎、寺田寅彦らが日本全国港湾の副振動を調査し、1909年に北原多作らは漁業基本調査をはじめ、日本海洋事業調査の基礎を築いた。寺田寅彦が「海の物理学」を出版したのは1913年である。

1925-28年には海軍の測量艦「満州」は日本南海の大観測を実施し、黒潮、赤道海流を精査しマリアナ海溝の測量も行った。多数の水産調査船を動員し1932年には日本海一斉海洋調査、1933年には太平洋一斉海洋調査が実施された。1936年には気象庁によって「海洋観測法」が刊行され、現在では「海洋観測指針」と名を変えているが海洋研究者の必読の教科書である。1941年には日本海洋学会は発足し、「日本海洋学会誌」、「海洋の科学」を刊行した。日本海洋学会は現在では2000名余の会員を有するまでに発展した。第二次世界大戦により各国の海洋調査は一時中断したが戦後はより活発に、また船舶のみならず人工衛星も導入して世界規模で行われている。我国は1956年に国際地球観測年事業として南極探検に参加して以来、黒潮及び隣接海域共同調査(CSK)、国際インド洋観測(IIOE)、国際生物事業計画(IBP)、国際深海掘削計画(IPOD、ODP)、南極海生態系及び海洋生物資源に関する生物学的研究計画(BIOMASS)、熱帯海洋と全地球大気研究(TOGA)、世界海洋循環実験計画(WOCE)、地球圏─生物圏国際共同研究(IGBP)、海洋観測国際共同研究(GOOS)、地球的オーシャンフラックス国際共同研究(JGOFS)などの国際共同研究の主要なメンバーとなっている。最近、スタートした地球規模の海洋生態系の変動(GLOBEC)はまさに海洋科学、水産学にまたがる国際共同研究で、1993年にはPICES(北太平洋海洋科学機構)とGLOBECは北太平洋の亜寒帯域と温帯域でClimate Change and Carrying Capacity(CCCC)に関する国際共同研究を遂行することに合意した。多くの国が国連海洋法条約を批准した現在、これからの海洋科学、水産科学の研究は国際協力を無視しして考えられない。

 

海洋学を教育する場

米国は前述のごとく、海洋学の後発国であるが、現在では海洋に関する総合的な教育を行う場を世界で一番多くもっている。例えば大学生、大学院生に海洋学を教える海洋学部はフロリダ州立大学、オレゴン州立大学、テキサス農工大学、メイン大学、ハワイ大学、マイアミ大学、ロードアイランド大学、ワシントン大学にあり、海洋科学あるいは沿岸海洋学研究所は、ウイリアム・メリー大学、ジョンホプキンス大学、コロンビア大学、ルイジアナ州立大学、ニューヨーク州立大学、アラスカ大学、カリフォルニア大学サンデイエゴ校、デラウエア大学、メリーランド大学、南カリフォルニア大学に所属している。

 

 

 

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