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明治21年には水産伝習所の設置が認可され、さらに官制の東京水産講習所(現在の東京水産大学)への発展へとつながっていく。明治37年(1905年)には帝国百科全書の第百二編に水産学が記されているが、この教科書は全13章から構成され第1章が総論、第2-6章が水産動植物の形態、生態の記述、第7章は漁労法、第8章が水産養殖法、第9章は水産食品製造で保蔵学や利用学の基礎を紹介している。第10章は水産肥料製造、第11章は魚油の製造、真珠加工、皮革製品などをまとめた水産工用品製造、第12章は水産薬品製造、第13章は製塩法で現在では水産学として認めてられない分野まで含んでいる。昭和8年発行の水産学全集では浮遊生物分類学、海洋学、漁船研究、水産経済学、漁業政策などが加えられて水産学のほぼ全分野を網羅している。1988年には田中昌一は水産学を大きく6つの分野に区分して報告している。第1は水産資源学・漁業学、第2は水産海洋学・環境学、第3は水産生物学・増養殖学、第4は水産化学・利用学、第5は水産工学、第6は水産社会科学である。特に第2分野の水産海洋学・環境学は海洋科学との重複あるいは境界領域で水質学、プランクトン学、生物海洋学、漁場環境学などの講義が含まれている。米国のロイス(1966)は水産の研究を5つの分野に大別している。第1は記載生物学(生理学、解剖学、行動学を含む)、第2は養殖学(病理学、微生物学、遺伝学、栄養学、第3は生態学(陸水学、海洋学、個体群動態学、分析化学)、第4は社会科学(資源経済学、文化人類学)そして第5は保蔵学(魚肉化学、魚肉に関する微生物学)である。日本の場合に比べるとより基礎研究の占める割合が大きくなっている。

欧米各国は19世紀には水産関連の学会、協会を設立し、学術雑誌を発行している。日本水産学会が発足したのは日本海洋学会より早い1932年である。日本プランクトン学会、水産海洋学会、日仏海洋学会のシンポジウムや学会誌の論文には海洋科学と水産学の境界領域をカバーする内容も多い。日本でも欧米同様に今後は海洋科学全般の教育をできる場を設けることは必要である。

 

2-2-9 超領域科学としての漁港学─漁港問題はどこで研究されるのか?─

 

1. 漁港をめぐる問題と学問の構造

漁港は物理的構造物として沿岸に存在している。その規模が、整備事業などによって大型化するにつれ、沿岸環境への影響力は大きくなってきた。

 

 

 

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