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2-2-8 海洋科学と水産科学

 

はじめに

1962年4月に東京大学付置の全国共同利用研究所として発足し、海洋物理部門、海底堆積部門と研究船「淡青丸」が設置された。以来、徐々に新部門が増設され1990年6月に海洋分子学部門が新設された段階で部門数は16になった。一方、附属施設として岩手県に1973年4月に大槌臨海研究センター、中野に1994年6月海洋科学国際共同研究センターが設置された。海洋研究所の設立目的は「海洋に関する自然科学の基礎研究」であり、海洋工学を除く、すべての分野が揃っている。16部門は物理(2)、化学(2)、地学(3)、生物(5)、水産(4)の5分野に区分され、研究船運航委員会、船舶委員会、陸上共同利用委員会など16ある所内委員会かの委員は各分野から選出された助手以上の教官を主体に構成されている。また研究船「白鳳丸」、「淡青丸」も分野間の均衡を保って運航されているのが現状である。海洋研究所の助教授、教授は全員、大学院理学系研究科、農学生命科学研究科の教官を兼務している。現在、農学生命科学研究科水圏生物科学(旧水産学科)専攻の講義、演習を担当している教官は16名である。設立以来30余年が経過しているが、これまで海洋科学と水産科学(水産学)の関係、差異などについて誰も論じなかった。現在、海洋研究所は日本学術振興会の事業の一つである拠点大学方式による学術交流に参画し、海洋科学分野でインドネシア(1988年〜)、タイ(1989年〜)、マレーシア(1991年〜)の東南アジア3カ国との交流を日本側の拠点として担当している。ところが1995年に東京水産大学が新設された水産学分野でインドネシアとの、昨年度は鹿児島大学水産学部がフィリピンとの交流事業を開始した。両大学は海洋科学分野でも1988年以来の協力大学でこれまで多くの研究者を派遣し、また東南アジアの研究者を受け入れてくれてきた。この事業に海洋科学と水産学の両分野が出現したため、双方が関係しているインドネシアでは研究内容の線引きが必要なり、東京水産大学と海洋研究所でこれまで多くの会合をもった。ついに1997年5月8日、9日の両日、海洋研究所において「水産科学と海洋科学」という課題のシンポジウムが開催され170名の研究者が参加し、活発な論議が展開された。

 

海洋科学の歴史と現状

ヨーロッパでは海洋科学の歴史は航海の関係から、古くは東ローマ帝国時代まで遡ることができると考えられる。紀元前7世紀のころのフェニキア人の航海活動やマルセイユ港の建設などは海洋探検史の眼で見るとまことに興味深いが、確かな記録が残っていない。

 

 

 

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