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しかし通常のダイビングの限界深度は有光層の30m以浅で、それより深い所の調査は有人あるいは無人の潜水艇、水中カメラ、水中テレビなどを用いなければならない。将来は50〜100mぐらいの深度に有人の潜水基地を設けることも可能で大陸棚上の調査の進展に役立つであろう。現在、日本には海洋科学技術センター所有の2隻の有人潜水艇『しんかい2000』、『しんかい6500』が有り、海底地形調査、熱水孔、冷水孔生態系調査、生物発光の観察、深海生物の採集などで成果を挙げている。しかしいずれの場合も1回の潜航時間は8時間前後であり、有人宇宙船の滞空時間に比べると極めて短い。潜航時間は積載されている電池の容量によっても制約をうけるので、長寿命の軽量電池の開発が待たれる。海洋の各位積土木作業では欠かせない水中ロボットも将来は大陸棚上での観測作業には威力を発揮するであろう。

1980年以降は海洋調査にも人工衛星が利用されるようになり、衛星に設置された各種センサーを使用して気象、表面水温、海洋の基礎生産力を推定するためのクロロフィル量についてのデータが集積できるようになった。荒天のため船舶の運航が困難な冬の亜寒帯水域や極海の調査も人工衛星では可能で、現在では地球規模の海洋観測には衛星のデータは不可欠である。人工衛星を用いて情報が得られるのは海表面付近のみで、それより深い所は船で観測しなければならないが、将来は有光層上部からの情報収集は可能になる。

最近は世界の海洋の至る所に、長期観測用の係留系が設置されて流向流速、水温、塩分、クロロフィル量などの日々の変動がリアルタイムで衛星を経由して基地(研究所)に送られてくるようになった。1990年代の後半から地球規模の変動を調べるためにWOCE(世界海洋循環実験計画)、GOOS(海洋観測共同研究計画)、JGOFS(地球的オーシャンフラックス国際共同研究)、GLOBEC(地球規模の海洋生態系変動の研究)など大型国際共同プロジェクトが実施され、我が国も積極的にこれらのプロジェクトに参加している。これらの共同研究では長期係留系の果たす役割は観測船同様に極めて重要である。

船の運行には莫大な経費がかかるので海洋観測に飛行機や飛行艇を導入すべきであるという意見もある。特に飛行艇は空中計測のみならず着水時には測器の投入や回収も可能であり、船で3日ぐらいかかる定点でも1日で往復できるのは魅力的である。

最近、注目されている測器としてマイクロデータロガーが挙げられる。この測器は主に海洋生物に取り付けて行動を観察するために開発され、当初は大きくて、重いため対象生物に負担をかけたが、最近ではタバコの大きさより小さい軽量マイクロデータロガーも現れた。鯨、イルカ、アザラシ、ペンギン、ウミガメ、鮭、水鳥に長期にマイクロデータロガーを取り付けることにより、これまで分かっていなかった回遊行動、潜水行動、摂餌生態も明らかにされており21世紀にはより発展が期待される。

 

 

 

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