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以上から、海洋生物の形態は、各々の時代で、その元来の性質が活かされる方法が模索されてきたと言える。その結果、美しいグラフィックを産み出し、一般の人に対しても海洋生物の存在をアピールすることになった。博物画が鑑賞の対象になったり、水中映像の展示が増加するなどの現象がその好例である。また、水族館の発達によって、実物の形態を身近に観察できるようになったことは、観客だけでなく、研究者にとっても、海洋生物の形態を把握するには過去に類を見ない時代だと言えるであろう。

海洋生物の形態学は、さまざまな潜水工学、光学、電子工学、材料科学、などの領域の支援を得た研究手法の進展とともに、把握できる状態、量や精度が向上してきた。それとともに、新たな視覚世界を拡大し、一般の人の海洋生物への認識も高めてきたと言ってよいと思われる。

 

2-2-6 海洋調査の現状と将来

地球の約3分の2を覆う海洋の調査は古くはアリストテレスの時代から行われているが、海についてはまだ多くの未知な部分が残されている。最近、注目されている海底の熱水噴出孔付近からはいまでも新種が次々に報告されている。地球規模の異常気象とも密接な関係を持つエル・ニーニョ現象の起因および影響についても詳しいことはまだ解明していないのが現状である。

海洋調査といっても沿岸と沖合い、浅海と深海、熱帯の海と極海では大いに異なる。いずれの場合にも、海洋観測には船は不可欠なのである。海洋科学は物理学、化学、地学、生物学、水産学にまたがる複合領域なので調査の対象も多岐にわたり、また調査・観測に使用する測器もさまざまである。例えば物理分野の航海ではCTD(水温・塩分・水深が計測できるシステム)、流向流速計、気象海象装置、XBT、化学分野では用途に応じた各種採水器、海中の沈降物を捕集するセデイメントトラップ、現場濾過装置、曳航式蛍光光度計、地学分野では海底地形作成用のシービーム、地質構造調査のための音波探査装置、重力計、磁力計、地震計、堆積物採集用の各種採泥器、生物・水産分野では超音波を用いてプランクトン、魚類の深度別生物量を計測する科学魚探、プランクトン採集器、魚類捕獲用のトロールネット、ベントス(底棲生物)採集用ネットおよびトラップなどが主な積載測器である。

浅海では、SCUBAダイビングによる潜水調査は珊瑚礁の調査、生物の行動観察、採集などに威力を発揮し、南極海でもアイスアルジーやオキアミ、ペンギンの行動観察にも導入されている。

 

 

 

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