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北米ではそれぞれのいきかたがとられた。哲学と考えたところでは、大学に海洋学部をつくり学部と大学院の一貫した教育体制をつくった。ワシントン大学、テキサス農工大学、マイアミ大学などがその例である。そこでは学生は海洋を中心として、海洋での諸現象を理解するために必要な基礎的な勉強をすることになる。学生は、海に関しては筋が通っているが、物理、化学、生物、地質学、などといった既存の学問から眺めると、それぞれを少しづつ身につけていて、幅は広いが深みはない。それに対し、記載学と考えたところでは、海洋学は大学院で扱った。ブリティッシュ・コロンビア大学、ハーバード大学、カリフォルニア大学などにみられる。学生は学部で物理学、生物学、化学などの勉強をしたあとで、大学院に入って初めて海洋学を学び、研究する。学生は既存の学問は深く身につけているが、海洋に関する知識は乏しく、広さもない。結果からみれば、どちらにも一長一短があって、しばらくは、現状のような両面の取扱いが今後も続けられた方がよいと思う。

さて、日本での海洋学への対応を振り返って眺めると、欧米と同じように両方がみられる。海洋学を学部から取り上げたのは東海大学で、学部の設立は、1962年のことである。十数年後に琉球大学理学部に海洋科学科が置かれたが、これも規模は小さいが東海大学と同じ扱いである。ただし、琉球大学は数年前の改組で、海洋学は少なくとも学科名からは消えている。いくつかの国立大学の理学部に1970年代に地球物理学科が設けられ、その中に海洋物理学講座が置かれたが、これも哲学派のいきかたといえる。当初は、地球物理学科の整備が済んだ後で、化学や生物にも同じ様な措置がとられる期待感が関係者の中に強くあったが、実現には到らなかった。したがって、日本では国立大学は最初は海洋学をOceanologyとして考えられていたようであるが、完遂することなく途切れてしまった感がある。

東海大学の海洋学部の発足と同じ1962年に東京大学海洋研究所が設立され、全国共同利用の大学院以上の教育・研究機関となった。ここが日本の海洋学の研究を支える中心として機能した。したがって、結果から考えれば、国立大学は海洋学を大学院からつまり、Oceanographyとして扱ったことになる。

ただ、日本が欧米と大きく違うのは、水産学の存在である。水産学だけの大学、学部、学科が日本国中に、国公私立で数多く存在する。私の知る限り欧米では水産学の大学はもとより、学部や学科にしているところはない。大学ではせいぜい研究室程度で多くは政府関係の研究所で扱っている。日本では、水産学の大学と研究所で海洋学の教育と研究のかなりが積極的に進められてきた。

 

 

 

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