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7. 海洋底質と年代学

大洋の深海底は1000年に1ミリといったようなゆっくりとした堆積過程を有しており、十数メートルの海底のコアを採取すれば数十万年の歴史をたどることができる。この底質の解析にはいろいろの方法があり、古地磁気の変化から地球磁場の逆転ということも明らかとなり、場所によっては花粉鮮析により地球の温暖化、寒冷化のサイクルを知ることもできる。海底の岩石の残留磁気の様子や年代測定などを併せて、海洋底拡大説や、プレートテクトニクス理論が生まれたことはよく知られているところである。

また、海洋底に存在するマンガンノジュールは、鉄、マンガンに加えてニッケル、コバルトなどの金属を含み、資源として重要であるが、これらの採取に際して海洋の汚濁の問題もあり、今後の課題である。

 

8. 海洋底における熱水活動

海洋には海嶺があって、マントル物質がわき出ていることは知られている。一方、海洋水中の化学成分濃度で、粘土鉱物の平衡では説明できない部分を解決する可能性のある現象として、海洋底における熱水の湧出がある、高温の熱水、金属硫化物のチムニーの存在とスモークなど、深海底における地球の活動はまだ未知の部分も多い。

海洋底における熱水の湧出は、わが国では古くから知られている黒鉱(銅、鉛、亜鉛などの硫化鉱体)の生成を実地に示すものであろうが、この熱水の周辺に存在する多くの生命体は、酸素の存在しないところで生活する生物であって、いわゆる嫌気性の生物である、これが生命体として興味が持たれているのは、原始地球で、地球上に単体の酸素分子がない時代の地球の姿を示す一例ではないかということであって原始地球の生命の発生を示すものであるという点である。深海の潜水探査艇によって、これらの深海底熱水や滲出水の様子が明らかになりつつあり、海洋は生命の母としての役割を果たしていることになろう。

 

9. おわりに

地球科学、あるいは地球化学の立場から、海洋のおける種々の現象を眺めてみたが、生命を生んだのも海洋であり、今後人類を含めて、地球の生命体を救うのも海であると思われる。しかし、海は宇宙より知られているだろうか。海の中は見えないし、電波で探ることもできない、このため海の観測がおくれている。海を知ること、海を合理的に正しく利用することが今後の人類の生存にとって重要な課題である。

 

 

 

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