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講義の中で、「患者の苦痛を傾聴できる忍耐、共感する感受性、関わりきろうとする意志、しっかりとした人生観や死生観、患者の価値観を尊重し配慮する謙虚さと包容力、患者がどんな状態になっても慰めと希望を提供できる能力が求められる」ということを学んだ。まず、患者の話に耳を傾けることから始めていきたいと思う。

 

コミュニケーションについて

 

ターミナル期におけるコミュニケーションの方法について、講義・ロールプレイの中で多くのことを学んだ。初めてロールプレイを体験し、言葉に詰まる自分に対し悔しさが残った。本当の患者の思いというものを理解することは難しいが、患者の役を演じることで少しは理解できたと思っている。コミュニケーション・スキルの基本として、傾聴・共感感情への対応が必要である。

出発点は、まず「聴く」ことから始めることである。Open Questionにより踏みこんだ話をすること、そのつど患者の意志確認を行うことが必要である。一方的に何かを伝えようとしても、まず話を聴かなければどんな説明も患者の心に残らない。言葉と態度で確実に共感できたことが、相手に伝えられなければ始まらない。患者が問題を解決し、結論を出せるように共に悩み、支援していくことが必要である。患者の気持ちは揺れ動いているものであり、感情の変化をキャッチし対応しなければならない。

以上のようなことを学び、実践へ結びつけられるのか不安だが、患者の悩みや苦しみに耳を傾け、受容し理解することが重要な援助であり、癒しとなるのだと思う。“話を聴いてほしい”と思ってもらえるような存在になれるよう努力したいと思っている。そして、短い時間の中であっても、患者の気持ちをいかに引き出していけるかを考え、訓練を重ねていきたいと考えている。

 

家族のケアについて

 

講義や実習の中で、家族ケアがいかに大切であるかということが改めて理解できた。これまであまり重要視していなかったことに、反省すべき点も多くあった。家族は患者の状態、症状、治療、苦痛、予後、家族の生活などについて様々な不安、悩みを抱えている。しかし家族は、患者を支えていかなければならないという思いもあり、患者の前では感情を抑えて接している。これらの因子がストレスとなっているため、家族に対しても援助が必要となってくる。

例えば、治療内容に関して選択を要求された場合、冷静な判断ができないことがある。医療者は正確に患者の病状や、今後予測されることなどを分かりやすく伝えることが求められる。情報の提供は一度きりではなく、繰り返し行うことが必要である。患者の病状が変化してからでは、家族は状況についていけないため、予測されることは早めに伝えることにより適応していける。患者と同じように、家族も苦痛や死の受容の段階を経ていくものである。家族が心残りなく、患者と共に過ごすことができるように配慮が必要である。患者・家族のLife Reviewに視点をおき、一つの単位として考え、時には労いの言葉を掛けアプローチしていきたいと考えている。

 

まとめ

 

6週間にわたる研修に参加して、講義の内容についていけるだろうかという不安もあったが、全体を通して理解することができ、学びの多い毎日だった。上記に述べた以外のことであるが、“死”について考える貴重な体験ができたことが強く印象に残っている。自分自身が死ぬまでをどう生きるかということや、死生観・看護観を検討してみて、まだ漠然としていて言葉で表現するのは難しい。しかし、この体験があったからこそ、本当に患者と向き合い、話ができるのではないかと思っている。

患者との関わりの中で、スタッフが困っている時やとどまっている時は、一緒に考えていきたい。そして、「傾聴できる忍耐、共感する感受性、関わりきろうとする意志」を互いに持つ努力をし、患者の人生観、価値観を尊重したケアを提供したい。

どこででも“緩和ケア”はできる。自問自答を繰り返し、できることから取り組んでいきたいと思う。

 

 

 

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