日本財団 図書館


経験に「頼る」のではなく、「活かす」ことが大切であると考える。パターン化して患者さんと接するのではなく、初めて出会う個人として接する必要がある。そうして患者さんと向き合い、支えることが、精神的ケアの始まりとなると考える。一人の人間として相手をどれだけ大事にできるか、どれだけ心を注いで関われるかということが重要であると考える。

《社会的ケア》

患者さんを知る努力が必要である。一人の個人としてのその人を知ることである。社会的苦痛は看護婦だけでは十分ケアできないとも思われ、チームとしての関わりを充実させることが重要である。

家族を社会的背景ととらえると、家族への援助は同時に患者さんへの社会的ケアとなる。しかし、家族へのケアを考える時は、「患者さんの家族」としてだけでなく、一人の個人として接することも必要である。そしてここでも、思い込みや押し付けは決してしてはならないことを学んだ。

《霊的ケア》

死に直面した患者さんと死について語ることは、決してタブーではなく、むしろ癒しのケアであるといえる。しかし、そのためには十分なコミュニケーションと、患者さんの情緒に共感できる心、そして自分自身を知り、自分なりの人間観、死生観を持っていることが必要であると考える。生きる意味や人生の苦悩・苦痛への問い、罪責感について共に考え、受け止めること、死後の世界について語り合えること、そして患者さんの希望を支えるだけでなく、医療者である私たちも希望を持って接することなどが必要であると学んだ。プロとして覚悟を持って、使命を果たす努力をしていこうと思う。

全人的ケアに次いで、緩和ケアの目指すものはQOLの向上である。そこでターミナルのリハビリテーションが大きな役割を果たすと考える。人生に視点をおき、マイナスではなくプラスの部分を探し伸ばす、という考えに基づいてケアをすることがQOLの向上につながることを学んだ。

次にチームアプローチである。緩和ケアにおいては、それぞれの医療スタッフが、勝手に専門分野のケアを提供するのではなく、同じ目標を確認し合い、それぞれの専門性を尊重しながら行うことが大切だと考える。そしてその中心は患者・家族であることを忘れてはならないのである。

 

2について

緩和医療の歴史・現状を知り、抱える問題点について学んだ。これから緩和ケア病棟を解説するにあたり、ハード面について十分な検討を重ねる必要があると感じた。そして、しっかりとした理念を持ち、スタッフ間で十分ディスカッションを行い、同じ思いで取り組んでいくことが大切だと考える。スタッフ同士で支え合い、互いがCareerのCareerであればと願う。

 

3について

今まで私はしっかりとした死生観を持っていなかったように思う。看護婦としての5年間の中で、いろいろなことに流されて、次第に深く考える機会が少なくなっていた。今回の研修を終えた今、再度広く深く考えている。はっきりとは表現できないが、いくつかポイントになることについて述べたい。

まず、自分自身をよく知ることが必要である。そして最期の時に自分の人生を愛しく思い、生まれてきたこと、死んでいくことに感謝できるような生き方、死に方をしたいと思う。常に自分に問いかけ、周囲の人々に感謝し、「その時」を大事に思うことが大切だと考える。

「人間は人間だから死ぬ」という大原則のもとで、医療者にできることは本当にわずかなことしかないと考える。しかし、だからこそ、そのわずかなことに最善を尽くしたいと思う。

 

今回の研修における学びは、今後私の大きな力になると思う。そして、研修で出会った方々との関わりは、何よりの財産となると思う。今後の自分に期待したいと思う。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION