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看護婦に、なる

 

北九州市立医療センター

市成 今日子

 

看護婦になって5年が過ぎた。その間に多くの患者さんと出会い、多くの看取りを経験した。看護婦として、自分はその方に十分なケアを提供できたか、その方は納得のいく死を迎えられただろうかと考えてきた。自信が持てるようになってきた反面、何かを見落としているのではないかという思いも出てきた。そんなとき、今回の「緩和ケアナース養成研修」に参加できることになり、それに向け課題を3つ立てた。

1. 緩和ケアを基礎から学ぶことで、自分自身の看護を振り返り、今後の看護のレベルアップを図る。

2. 当センターの緩和ケア病棟開設に向け、必要事項を学ぶ。

3. 自分の人生観、死生観を見つめ直す。

研修を通してのさまざまな学びを、この3つの課題をもとに整理したいと思う。

 

1について

緩和ケアの第一の目標は全人的ケアであり、身体的・精神的・社会的・霊的ケアに分けられる。この4つの側面から今回の学びを述べたいと思う。

《身体的ケア》

症状コントロールについて、基本的考えと新しい情報を得ることができた。疼痛コントロールについては、モルヒネだけでなくさまざまな沈痛補助薬の使用方法を学んだ。特に、ケタラールの内服投与は新しい情報であった。疼痛コントロールの方法を学ぶことで、緩和ケアの積極性について知ることができた。ターミナル期の輸液についても新しい考え方として知ることができた。「何となく」輸液をしていることが多い現状であり、目的を明確にし、効果をアセスメントすることの必要性を感じた。

セデーションについては、導入までの十分なコミュニケーションが必要であると感じた。浅いセデーションからの導入や、「お昼寝」という考えで1〜2時間のセデーションをかけるなど、さまざまな方法を学んだ。家族の反対により、導入できないときの一つの考え方として、「家族の一員としての最後の役割」であるということを学んだ。しかし、患者さんと家族の関係をよく知り、調整をしていければ、より穏やかな最後を過ごせるのではないかとも考える。医療従事者としてセデーションと安楽死の違いについて、しっかりとした見解を持つことが必要だと考える。

症状コントロールにおける看護婦の役割として重要なのは、患者中心の症状マネジメントをすすめることである。24時間患者の側にいる看護婦だから、できるケアは多いと思われる。そのため、正しい知識を習得し、確かな判断力を持ち、技術を磨く必要があると考える。そして、何よりも患者の訴えに耳を傾け、苦痛を理解する姿勢が求められるのである。

《精神的ケア》

コミュニケーションは医療において非常に重要である。終末期患者の精神的ケアを行うときにも、コミュニケーションなしでは始まらない。傾聴・共感・感情への対応というコミュニケーションの基本を学ぶことで、今までの自分が患者さんの思いをほとんど聞けていなかったことに気づいた。思い込み、自己満足の域を脱していなかったのである。

 

 

 

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