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3) 社会的苦痛

仕事上の問題、経済的問題、人間関係、遺産相続の問題などがあり、これらのことが患者や家族の不安や悩みの原因になっていることもあるので、このような社会的苦痛に対しての援助も大切である。しかし、医師や看護婦では解決できないこともあり、ソーシャルワーカーと情報交換しながらお互いの専門性を生かして援助していくことが大切である。

 

4) 霊的苦痛

この苦痛には、生きる意味への問い、人生の苦難への問い、罪の意識、死の恐怖などがある。霊的苦痛への援助のためには、一人の人として、そして看護婦として人生観、死生観、看護観をしっかりと持つことが大切である。そのうえに訴えを傾聴し、共感できる感受性を高め、患者と向き合って逃げない姿勢が必要である。

 

家族ケア

 

講義、実習を通して家族援助の必要性、重要性をしっかりと認識できた。家族も種々の苦痛を持っており、それは患者と同様にやはり患者ががんと診断された時、あるいは疑われた時から何らかの苦痛を持っていると考え、それらの苦痛を理解していかなければならない。家族もケアをされる人である。患者と家族のそれぞれの価値観を尊重しながらケアをすると同時に、関連性も見て適切な援助を行う必要がある。

 

チームケア

 

緩和ケアの目標は患者と家族にとって最高のQOLを実現することであるが、患者や家族のニーズは非常に多様である。それを医師や看護婦だけで満たすことは困難である。様々なメンバー(医師・看護婦・ソーシャルワーカー・宗教家・理学療法士・作業療法士・栄養士・薬剤師・ボランティア)がお互いの専門」性を生かしてかかわることで、患者や家族の多様なニーズに応えることが可能になる。また、患者や家族は様々な職種のスタッフに違う顔を見せることがあるので、お互いに情報交換することにより患者や家族の本来の姿がよりよく理解でき、適切な援助が行われやすい。

チームケアではお互いの専門性を生かしながら、チーム全体で同一方向に向かってケアを提供していく必要がある。そのためには情報交換が不可欠である。情報交換・援助の方向性の統一のために、看護婦だけでなく他職種参加の申し送りやカンファレンス、合同のミーティングを有効に活用していくことが大切である。

 

おわりに

 

このたびの研修ではとても大きなことを学ぶことができた。緩和ケアについての知識はもちろん、一人の人として成長し続けることの大切さを学ぶことができた。この研修で学んだことを基盤としてさらに積み重ね、人として看護婦として成長していきたい。また、当院に緩和ケア病棟ができることについて、ホスピスの語源である「あたたかいおもてなし」のできる病棟を目指して開設の準備(体制づくり、スタッフの教育など)をしていくことも今後の課題である。

 

 

 

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