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疼痛アセスメントの主役は患者であり、患者とともに痛みについて語り合う。医療者は患者の痛みの表現を引き出す工夫をする。看護婦のこれまでの経験は大事であるが、それにとらわれ始めるのは要注意である。事実なき解釈をすることが多く、事実がはっきりしないときは、確認することを習慣づける必要がある。そして、とりあえずどこまで痛みが緩和すると楽になるかという初期目標を聞くことで、患者の痛みの表現の仕方と痛みの程度の満足感が推測できる。すなわち痛みの尺度は絶対評価ではなく、他者と比較するものではない。

次に考えていきたいことは「痛みを持つ患者への応対」である。応対の心があれば痛みの強さ、部位、性状がわかる。そしてそれらへの対策の知識があれば原因追求、治療手段が分かり、刻々と変化する症状に対応することができる。対策の知識、対応の実践は、応対の心があってはじめて生きると教えられた。

 

2) 家族のケア

誰にとっても家族はいろいろな意味でとても重要な存在である。患者の死を予測し、やがて現実に直面し、通り抜ける中で様々な情緒的反応を示す。それらはショックにはじまり、怒りの感情はしばしば見られる反応である。がんという病に対する怒り、がんになった患者に対する怒り、治癒に持っていくことができない医療者への怒りなど様々な対象に向けられる。病気に気づいてやれなかった、十分なケアをしてやれなかったなどの自責の念に苛まれる人も多い。看病や生計維持など具体的な事柄に対する不安、死に対する漠然とした不安なども多くつきまとう。そして、がん患者との死別は家族にとってももっともつらく厳しい時間であると同時に、それまで気づかなかったことに気づいたり、棚上げにしていた問題に直面して対処したりすることのできる時期でもある。

家族ケアは、家族が直面している苦しみに共感すること、そして直面したくないが直面しなければならない苦しみに、家族とともに目を向けていく勇気を持つことである。

家族を患者の従属的存在として捉えるのではなく、一人ひとりを個別的に捉える。いつどのような場合も受け止める、批判しないといった対人援助の原則をしっかり守らなくてはならない。

家族のサポートを考える際には、家族をシステムとして捉える考え方を学習した。システムの中には、世代間あるいは情緒的な繋がりの強いもの同士といったサブシステムがあり、それらが全体としてひとまとまりの家族を形作っている。

システムとしての家族を理解するには、家族の歴史・構造・機能をみることがあげられる。がんによって死んでいく患者の家族をサポートすることは、患者の生と死をケアしようとすることに似ている。家族をそのまま受け入れること、尊重することが大切である。

また、家族は家族という集団のみで社会に存在するわけではない。他の社会機構に密接に関係しながら、その影響を受けて家族のあり方は変わってきている。しかし、求められる家族の役割は癒しと互いの成長ではないだろうか。

 

3) チーム医療

がん医療はチーム医療である。緩和ケアの実際にあっては患者・家族などの「求め」に沿ってケアが提供されるという姿勢が基本である。「求め」は多種多様であり、それらに十分応えていこうとするならば、多職種によって構成されたチームが形成されなければならない。

チームアプローチの利点として

1] 患者の状態を総合的に判断できる

2] 患者の多くのニードを満たすことができる

3] それぞれの本来の任務を遂行できる

4] 方針の一致したケアができる

がある。

その中で大切なことは「価値観を共有すること」「役割認識」「同行してのケア参加を経験し、互いに評価できる」ことにある。カンファレンスの重要性がここにある。チームアプローチとしてはネットワーク型情報交換が必要で、チームを育てていく上でも重要である。看護婦として、コメディカルと患者間のコーディネーターとしての立場をフルに活かしていくことも大切である。

 

 

 

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