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痛みを持つ患者への応対の心

 

山口県立中央病院

山下 幸子

 

はじめに

 

自分の勤める施設は一般病院であり、また、緩和ケア病棟の開設予定も今のところはない。参加対象者の中に、がん及びターミナルケアに従事している看護者ならびにがん看護者と窓口も広がり、それでやって受講できるようになった。

参加したいと希望だけが強く、しかしはっきりと言語化できる動機は見つけられなかった。一般病院でも終末期の患者はいる。その看取りのたびにいつもなにがしかの後悔があり、これで良かったのか、もっと違うケアがあったのではないかとの繰り返しであった。

ここで緩和ケアの基礎から学習することで自分自身の問題が整理できればと思う。

研修目的は

緩和ケアの基礎を学び、一般病院における緩和ケアを実践できる能力を養うこと。

緩和ケアの3つの大きな柱として

1. 全人的苦痛への対応

2. 家族のケア

3. チーム医療があげられる。研修での学びを併せて述べてみる。

 

研修での学び

 

1) 全人的苦痛への対応

患者はまず身体的な不快な症状を軽減してほしいと望む。身体症状のコントロールがうまくいかないと、患者はそれと闘うだけの日々となり、患者のQOLは著しく低下する。がんの患者が苦しむ症状としては、疼痛、全身倦怠感、呼吸困難などが代表的なものとしてあげられる。とりわけ痛みは患者をもっとも苦しめるものであり、がんという病気が恐怖の対象とされる大きな理由でもある。

痛みが軽減されなければ、患者の活動性は低下し、食欲・睡眠を妨げ、患者をさらに衰弱させることになる。また、痛みが続くことで患者は精神的にも荒廃していく。

講義の中でがん疼痛の原因や機序を学問的・分析的に学ぶことができた。痛みは不快なものだが、急性痛は生体を守るため、また、病変がどの部分に発生しているかを知らせるための重要警告信号である。しかし、これらの痛みが持続すると、痛みの悪循環が成立し、さらに痛みが増強する。そのためにそれぞれの発生機序を把握し、痛みを押さえる治療が必要となる。

がんの痛みの身体的要因として

1] がん自体に原因のある痛み

2] がんの治療に関連した痛み

3] 褥創・便秘などのように衰弱による痛み

4] がんと関係ない痛み

などがある。

さらに、がんによる痛みにも

1] 侵害受容性の痛み

2] 神経障害性の痛み

3] 交感神経が関与した痛み

などがあり、これらの痛みの原因により、疼痛緩和の方法が異なる。

痛みをアセスメントする際には、多角的かつ総合的にアセスメントすることが不可欠となる。

 

 

 

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