日本財団 図書館


研修で学んだことと課題

 

和歌山労災病院

森 久美子

 

はじめに

 

私の病棟では肺がんや血液疾患で末期を迎える人が多い。医師の治療に納得のいかない日常を打破したいこと、症状コントロールの方法を知ること、院内におけ緩和ケア研修プログラムを組むための参考とすることを目的とし、研修に参加した。目標を「緩和ケアの実際を理論的に学び、一般病棟における緩和ケア看護の実践能力をつけ、緩和ケア教育の方法を知る」とした。

 

研修で学んだこと、考えたこと

 

講義の中でもっとも印象に残ったのは、2日間で学んだチームアプローチであった。今までにない講義方法で、それぞれの立場での心理のとらえ方や感じ方ができ、相手の立場に立つという実感ができた。看護実践の場で、相手の立場に立ったらどう思うかと考えることに役立つと思う。患者体験は、遺書までしたためたことで患者さんの気持ちに少し近づけた気がした。過去の事例で、遺書を書いた人がいたが、どのような思いで書いていたのか少し分かったような気がした。臨終が近づくにつれ心に思うことは、一番近くにいてくれるのは誰か、誰が自分を見守ってくれるのかということだと実感した。

症状コントロールについては、症状マネジメント、消化器症状、疼痛コントロールにおける看護婦の役割、鬱・不安について学びよくわかった。症状コントロールは患者のためといいつつ、看護側の都合で行っていることがあると指摘された。本当にそうだと思った。「医師を責めない、ケアは看護婦がすると良い」とのことで少し考えを変えられそうな気がした。患者自身がマネジメントできるような援助をしていきたい。消化器症状では嘔吐、腸閉塞、便秘、下痢全体をコントロールする必要性がわかった。今までは、知識不足から医師に問いかけることもできずにいたが、これからは、積極的に働きかけていきたい。「がんの痛みはコントロールできる」との山形医師のことばがよかった。先生の本も読み終えて、告知の重要性とあり方を考えさせられた。また、ペインマネジメントは、痛みがなくても飲みつづける必要性は理解していたが、患者が納得する説明がなされていなかったと反省をした。今後パンフレットの作成を考えていきたい。「鬱・不安」については、否認ということがよくわかったが鬱・不安に対する処置がよくわからなかったのは残念であった。

生命倫理は、小原先生の「ホスピス」を読んでいたためよくわかった。「QOD」「死にがい」「死なれがい」「看取りがい」という言葉との出会いが感動的であった。私達は今まで生きがいばかりにこだわっていたように思う。緩和においてこの考えは大切である。さらに、死に対してはいつかは死ぬという答えしかなかったが、病気だから死ぬのではなく、人間だから死ぬということがわかった。また、死亡退院が続いた時「もういやになった」というスタッフの声を聞きながら、その彼女たちの心の中をわかってあげられなかったのではないか。「ケアラーのケアが必要」と言う先生の言葉を忘れてはいけないと思った。

緩和医療の恒藤先生の講義では除痛をはかることがとてもよくわかった。そのほかに、「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」という話から、自分自身の今までを振り返ることができ、曲がったことが嫌いで、素直になれなかった自分を見つめなおす機会になった。長期にわたり職場を離れていることを利用し、考え方を変えてみようと思っている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION