おわりに
私の病院は大学病院であるが、本当にいろいろ恵まれている。リエゾン、ペインクリニック、放射線療法、病棟専属の薬剤師、あらゆる科の医師。これだけそろえば、集学的緩和医療が可能ではないか?(集学的という言葉はあまり好きではないが)まさに、あらゆる状況の患者さんが訪れるに十分な対応が可能ではないか?そこで、最も大切な役割を担うのは看護婦であろう。先ほども書いたように常に患者の立場に立ってケアするとともに、これらたくさんの資源を上手く活用していき、コーディネーターになることが特に求められることではないかと思う。
そして一番大切なのは、看護婦をはじめ一人ひとりの医療者がホスピスの心を持てるようになることであろう。そうなるためにも、研究会などで少しずつ今回学んだことを伝えていき、治療と緩和ケアが上手く調和できるようにがんばっていきたいと思う。
講義で学んだことは、よく考えるとハード面がなければできないことは一つもなかった。すべて人の心というソフト面がないと、実現できないものばかりである。
やるべきことはたくさんあるが、一般病院だからといってあれができない、これができないなどといってないで、今やれること、患者さんのベッドサイドに行って思いを共感する、ペインスケールの方法を見直していく、などやれることから少しずつがんばっていきたい。火がついた一本のろうそくから、いつの間にかたくさんのろうそくに火がついていくように。まずは、自分が一本のろろうそくに火をつけていこうと思う。
<参考文献>
鷲田清一;「聴く」ことの力─臨床哲学試論、TBSブリタニカ、1999