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緩和ケアに携わる者としての看護観

 

今回の研修で自分の看護観を見直し、新たに自分なりの看護観について考えたので書いてみる。

 

1) 患者の立場に立った看護

私が看護学校にいる時に、授業の中で看護観を書いた物をもう一度読み返すと「患者の立場に立って、看護したい」と書いていた。本当にこれはとても大切なことであるが、いざ現場に出てみると患者の立場に立つことがどれほど難しいか、忘れられやすいか、そして時に看護者はそれを遂行するためにどれほどの勇気が必要かということを実感した。患者の立場に立って患者に寄り添い、患者らしさを大切に考えていくことが看護する上での最も大切な鍵になると思う。

 

2) よりよい助死者になる

生命倫理の時間で「助死者」という言葉を知った。緩和ケアにおいて私達の役割は、患者の残りの大切な短い時間に新たに魂を吹き込めるように援助することであり、すなわちよりよい死を迎えられるような「助死者」になることである。それには自分も死というものを逃げないで見つめ、自分なりの死生観を持っていることが必要である。

 

3) 究極のケア

「その人が、そこにいるだけで何もしなくても大きなケアになる」ことがある。私は、このいわゆる無条件のケアを一番大切にしていきたい。京都大学の鷲田清一氏が話されていたが、『究極のケアとは、ある効果を求めて行われるのではなく、「何のために?」という問いが失効するところで行われるものである。こういう人だから、あるいはこういう目的や必要があってという条件つきで世話をしてもらえるのではなく、条件なしにあなたがいるからという、ただそれだけの理由でうける世話それが究極の本当のケアである』。ただあなたが、そこにいるから私は側にいる、ケアをする、そんな究極のケアを実現していけるようになりたいと思う。

淀川キリスト教病院の恒藤先生が、緩和ケアにおける看護婦の資質について教えてくださった。「誠実、感性が豊か、忍耐がある、謙遜の心を持てる、愛がある」これらのことも心にとめて今後もがんばっていきたく思う。

 

一般病棟においてどんな緩和ケアが提供できるか

 

最近ホスピスが増加してきてはいるが、まだまだ不足しているのが現状である。よって淀川キリスト教病院の柏木先生も話されていたが、『一般病棟においてホスピスの心を持ったケアができるようにしていくこと』がとても大切になってくると思う。よく考えてみると、患者さんによっては、最期まで苦しくても治療などしながら闘い抜きたい患者さん、自分のニードを全く示されない患者さん、家族から全く協力の得られない患者さんとさまざまである。そういった患者さんは、、必ずしもホスピスが一番いいお世話ができるとは限らないのではないかと思う。

よく考えてみるとホスピスも大変であるが、一般病棟もそれなりに大変である。ホスピスではある程度自分の病気についてご存じで、家族も協力的であることが多い。しかし、一般病棟では今まで元気に働いていた方が人間ドックでがんを見つけられて急に入院など、精神的にも社会的にも安定期以前の患者さんが入ってこられることが多い。こういうふうに考えていくと、一般病棟の方が患者さんはある意味で危機的状態であるといえるのではないか。だからこそ、一般病棟で働く看護婦はより一層のあらゆる緩和ケアの知識を身につけておくことが要求される。

 

 

 

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