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今が再スタートの時

 

淀川キリスト教病院

高山 圭子

 

はじめに

 

私はホスピスで働きはじめて3年目になるが、自信をもって自分の看護ケアを提供できているかというとそうではない。それは、一つ一つのケアに対しての理論的な裏づけが不十分であり、知識と経験を系統立てて積み重ねることができていないからだと思う。

しかし、このことを自覚しながらも実際何からどう取り組めばよいものか、知識として必ず習得しなければいけないことは何かといった具体的な課題を見つけられずにいた。そんな中、この研修に参加するという絶好の機会を得た。ホスピスナースとして自分は何がわかっていないのか、できていないのか、それを一つでも多く発見し課題を明確にする。それがこの研修における私の目標であった。

その目標について以下の項目を中心に振り返り考察する。

 

病状マネジメント

 

私は、今まで症状マネジメントは、医療者が行うものだと考えていたが、症状とはその人が感じ取る主観的なものであり、その主役は患者自身であるということを念頭に置かなければいけない。

今回、内布先生の講義で、症状マネジメントの統合的アプローチについて学んだ。このモデルを使ってアプローチの方法を段階的に理論立てて考えていくことで、今までの看護介入がどのような裏付けのもとで行われていたのかということ、患者中心のプランの作成展開とはどういうことなのか、そしてそれを進める上で、自分は何が不十分であったかが明確になり、とても興味深かった。一つの症状に対し、そのメカニズム、出現形態を理解することは、重視し努力してきたつもりでいた。しかし、患者が症状をどのように体験し、どのような方略をとっているのかを理解した上で、客観的な観察を含めたデータをもとにアセスメントすることは十分できていなかった。まず、その時点における状況や結果を十分アセスメントすることで、初めて看護婦の行う方略が導き出せるのである。そこには、看護婦の適切なアセスメント能力が必要になる。一番肝心な部分だと思う。そのための必要な資源を考えると、症状、治療に関する豊富な知識をもち、患者が言っていることをていねいに読んでいくこと、その中には痛みをもつ患者に共感できる感性も必要となる。さらに出にくいことについては、表現しやすいように関わっていくことである。そして、実際の方略を提供するために、症状緩和のための知識と有用な看護技術をできるだけ多くもっていなければいけない。教育の重要性も改めて感じた。それは薬についての正しい知識をもってもらうことであったり、症状が言えることもそうである。そして、変化した結果を評価し、個々の患者により適した方法を考えていかなければいけない。

今後私は、臨床でこのモデルを使っていきたいと考ているが、決してモデルをあてはめることを目的にするのではなく、あくまでも患者中心の症状マネジメントとしてこの考え方を基本にし応用していくことが課題になると思う。

 

 

 

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