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研修を通して学んだこと

 

看護の視点としてどこまでも、QOLは患者が決めることと認識しつつ、丁寧に一つひとつのケースに関わっていくことだと感じた。こういった看護婦の役割を果たしていく中でのコミュニケーションの重要性に改めて気づいた。コミュニケーション論には、講義と演習で9時間の枠があったが、ふだんの自分の傾向性がわかって面白かった。つい、何か言葉を使って答えなければならないと感じてしまっていること、Open questionとClose questionの区別はふだんはあまり意識してなかったこと、また傾聴、共感、感情への対応と3つのポイントをわかりやすく実践に即して教えてもらえて、非常にためになった。

その他、看護婦の姿勢として求められるものは、結論的には、ひとりの人間としてどうかと問われる内容ばかりだとつくづく感じた。いろいろな物事に関心をもって、日常的に感性をみがく訓練をしていくことしかないと思う。中でも、看護婦としての看護観、死生観の確立は欠かせない。死生観については「チームアプローチ」の演習の中で、多くのことに気づかせてもらった。自分の命が残り一年としていろいろな角度から考える中、自分にとって大事なものが見えてきたこと、日常の何気ない生活が本当に大切な意味をもっていると思えたこと、22人の研修生が当たり前だが皆がそれぞれ違った生き方をもっていることを感じとることができた。これは、これからの終末期看護をしていく中で、常に自身が意識していくであろう内容であると思う。

この演習は看護に携わるすべての人に体験してもらいたいと強く思った。しかし、実際にこのプログラムをやっていこうとするには、提供する側のエネルギーがかなり要求されると思う。それを提供して下さった講師の先生には本当に感謝している。今回の研修では講義ももちろん素晴らしい内容ばかりで、日々感動であったが、それにもまして演習やグループワークは自分自身を見つめる良い機会であった。また、いろいろな人の自分以外の意見や考え方を知るのに貴重な時をもてた。特に、事例検討では具体的な実践の話になり、全国的に共通している問題や自分の病院での問題点が浮きぼりにされて興味深かった。コミュニケーションのところでは、自分自身をよく知るところから始まった。

それにも関係するかのように、まず今の緩和医療の実態を客観的に知ることの大切さを感じた。欧米諸国と比べると、症状コントロールについても立ち後れが見られる。その文化的な背景や今の傾向性の中で、緩和医療に積極的なのは看護婦であり、医師はどちらかというとそうでない傾向がある事実。お任せ医療や“あうん”でわかる思い込み、bad-newsにふたをしてしまうなど自分自身にもあてはまることがある。これらの事実や実際をマイナスで見るのではなく、これからの課題として真撃に受け止めていきたいと思う。問題や困ったことがない方がかえって不自然だから、こういう観点からもつくづく、日々学び、訓練していかなければと感じる。現場に帰ると業務に流されてしまいがちになるので、この当たり前のことを意識していきたい。それには、今回の研修で出会った皆との交流を続けていきたいと思う。それぞれがそれぞれの場で、今回の研修の学びを活かしていけたらと思う。

 

今後の課題

 

この研修には、3点の目標をかかげた。1]ターミナル期の症状コントロールについて学ぶ、2]ターミナルステージに合わせた看護介入について学ぶ、3]緩和ケアを推進するシステムについて学ぶ、である。これらをあくまでも看護の視点で学ぶことと、心して臨んだつもりである。その中で、1]については、自分の病院での水準がある一定のところまで達していると感じられた。まだまだ不十分なところはあるが、これに関してはこれからも最新の情報を得ながら、患者側の身になって、症状コントロールに必要なケアの提供を心がけていきたい。2]については、講義の中で得た知識をこれから自分なりに整理していくことだと思っている。たとえば緩和医療の講義の中で、患者が亡くなる1か月前ぐらいから、身体症状が多く出始めること、そして、亡くなる1週間ないし2週間前に日常生活動作の障害が出始める傾向があること。言い換えれば、1か月までは、身体症状が比較的軽く、亡くなる1週間ないし2週間前までは、かなりの患者が、日常生活が可能だということである。ならば看護婦として、患者の自律面からもアプローチが考えられるのではないかと思えた。

そして、3つめに関しては、研修の統合という形でホスピス実習を受けさせてもらえたので学ぶものが大きかった。その中でも、チーム医療として、医師との連携が不可欠であると強く感じた。それぞれの役割を果たしていく中に、患者やその家族を中心とした医療の提供がなされないといけないと強く感じた。緩和医療が目指すものは、ある意味で医療が目指すべきものとの思いを持った。何のための医療や看護なのか、常に自身に問いかけながらこれからも進んでいかないといけない。

「治癒しない疾患の患者とその家族を対象として、積極的かつ全人的なケアを基本として、QOLの向上を目指して」歩んでいきたい。

 

 

 

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