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看護婦は一人の人間としてどうなのか

 

愛知県がんセンター病院

坂井 良子

 

はじめに

 

この研修のねらいである「終末期患者と家族のための緩和ケアの質の向上を図るために緩和ケアの基礎を学び、看護を実践できる能力を育成する」に沿って4週間にわたる研修を終えた。その中で、期待していた以上の学びを得ることができたと感じている。

講義では、緩和医療を担っている方々の貴重な経験や現状の問題点も聴くことができ、自分の病院に戻った際に十分参考となる内容が多かった。中でも心に留めたことは、今からがすべての出発点であるということである。現在、医療が抱えている問題は多種にわたる。その中で、問題だと気づいた時から、その解決に向けて取り組んでいくことだと強く感じた。

緩和医療が目指すものとして、1]全人的ケア、2]QOLの向上、3]チーム医療、4]継続ケアがある。これらは、患者だけでなく家族にも同様のケアの提供が望まれる。これらは本来、医療全体が目指すべきものであると感じた。誰のための医療か、この点を重要視する視点が望まれる。これらは、常に人間を大事にする視点から見ていかなければならない。中でも倫理教育は、看護教育の中で不足している現状があるという。確かに、看護の勉強をしてきた中でほとんど印象に残っていない分野である。しかし、倫理の原則が「人を尊重する」ことを最も重要視することにあるので、倫理的視点なくしては人を大事にする医療は成り立たないと思う。

自分の病院の看護部から配布されている看護部の理念が書かれているカードには、日本看護協会の看護婦の倫理規定が同時に収まっている。しかし、これらについてもじっくりと読んだ記憶がない。講義を受けた後、あらためて読み直したところ、非常に重要な点が盛り込まれていることに気づくことができた。看護婦として常に意識下に置いておかなければならない内容だと思う。この倫理規定には、継続的学習の必要性がうたわれている。全人的ケアについて、トータル的に患者の苦痛を見ていくいくつかのポイントを教えてもらった。今後はこれらの学びをさらに深め続けていくことが大切だと思う。

自分が置かれている現場での看護の中で、できているなと感じる点とまだまだこれからと思う点と様々であった。特に、患者と同様に家族のケアも重要といった点では、改めて家族とは患者にとってどういう存在をいうのかを考えさせられた。家族だから患者の世話をして当然という考え方が当たり前のようにあった。ホスピスの婦長をしている講師はその点を、家族にも家族の人生があり、また、患者とのそれまでのつながり方によっては、面倒をみなくても仕方ないといったケースもあると看護婦は理解すべきだという。しかし、QOLの向上という観点からは、家族と医療者は協働し合ってお互いの情報を共有しながら進めていくことが大切である。また、患者およびそのまわりにいる人達一人ひとりが意思決定をしていけるよう、働きかけることだという。

 

 

 

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