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姿勢、移動、保清、食事、排泄など日常生活上の援助を「より安楽に」、「より快適に」という視点で実施し、生活環境を整えることも症状コントロールにつながることである。そのためには看護の基本的な技術(熟練した技術)や看護上の工夫も必要となる。4]医療チームの調整者となる。患者・家族へがんの痛み・治療・副作用などについての説明を行い、痛みを緩和するための工夫や正しい知識などがもてるように支援する。医師や薬剤師と連携を図る。症状コントロールでは薬剤師の存在は大きいので、一般病棟でもカンファレンスに参加してもらうことが有効である。

 

4) チームカンファレンスの重要性

患者・家族のQOLの向上を目指し、支えていくにはチームメンバー間の連携が不可欠で、そのためにチームカンファレンスが重要となる。職種の異なるメンバーが、それぞれの立場から情報を提供し合い検討して、患者・家族の目標やチームの方針を明確にする。チームで目標の評価を行う。霊的痛みや社会的痛みへの対応ではチャプレンやMSWの果たす役割が大きい。メンバー皆が同じ目標のもとにケアを行って初めて、チームとしての力を発揮できる。

 

5) ボランティアはチームの一員である

患者の生活を支えていくにはボランティアの存在も大きい。家庭的な雰囲気を感じさせるような環境作り、毎日の催し物や、お茶会の主催。大小様々な形のクッションは安楽な姿勢保持に役立ち、ベッドカバー、足マット、ドアストッパーなどボランティアの手作りのいろいろな小物が気持ちをなごませる。他にも花壇の手入れや音楽活動など、多くの人々がそれぞれの形で活動されている。一人の患者は多くの人達によって支えられている。ボランティアの方は皆、患者・家族との間に適度な距離を保って関わることを心得ておられるように感じた。ボランティアとの連携では病院側が何を、どこまで協力してもらうのかを明確にしておくことが必要である。

 

6) 食事は最後の1日まで患者を支える

私達が実習した施設は単独型のホスピスという利点を生かして、食事については患者の状態に応じてかなり細かなことまで対応されていた。ターミナルスペシャル食は、終末期になりほとんど食べられなくなった時にゼリー、シャーベット、飲物などを患者の希望する時にいつでも提供するものだが、「見るだけでもいいから」と最後まで皆と同じ食事を希望される方もいらっしゃるということだった。視覚的なことも重視されていて、毎日メニュー別に食器が変えられ、毎月1回の行事食は目で見て楽しめる。予約しておけば家族も一緒に食べられるので、患者を囲んで楽しいひとときが過ごせる。併設型の所ではどこまで対応できるのか難しいこともあるだろうが、食事を提供することで患者のQOLの向上を目指すという役割を職員に理解してもらうことが、協力を得るためには必要である。

 

7) 看護業務の効率性

緩和ケアにおける看護業務は日常生活上の基本的な援助が大半を占める。保清、排泄、食事、移動など基本的なニーズをより安楽に、より快適にという視点から満たすことが私達に求められている。熟練した技術はもちろんだが、患者それぞれのケアの手順を熟知し、チームで統一することや、チームリーダーが業務調整を行い看護婦同士の連携をスムーズにする、また看護方式の検討など業務の効率化について考え、患者のベッドサイドで過ごす時間を確保することが必要だ。

緩和ケアの考え方と業務の効率性ということは相反する部分もあるかもしれないが、保清や排泄の介助に追われ体力を消耗して1日が終わってしまうと看護婦のストレスも強くなる。患者の日常生活習慣や希望を尊重するという緩和ケアの考え方に基づきケアを行うためには、患者対看護婦、1.5対1の基準を単に数字上で満たすだけでは困難なこともあるのではないか。その施設がどんな患者を受け入れているかによっても異なるとは思うが、マンパワーと体力が必要だと感じた。

 

 

 

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