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緩和ケア病棟開設準備のために

 

宮崎市郡医師会病院

筒井 麗子

 

今回の研修目的

 

1) 緩和ケア病棟開設に向けて、準備を進めるための知識を学ぶ。

2) 緩和ケア病棟における看護の実際を学ぶ。

3) 看護婦以外のメンバーとの連携について学ぶ。

4) ボランティアとの連携について学ぶ。

 

病院実習の目標

 

4週間の研修で学んだことを現場で確認し、今後、緩和ケア病棟開設の準備を進めていくために何を考え、検討すべきかを具体的にできる。

 

病院実習で学んだこと

 

1) ホスピス・緩和ケア病棟の理念の重要性

ホスピス・緩和ケア病棟の理念が明確化されていること、そして職員一人ひとりがその理念を理解していることがその施設がどんなケアを提供できるかということの基本となる。理念に基づき看護方針やチームの方針も決まる。職種の異なるチームメンバーが理念のもとに、それぞれの立場で自分の役割を果たすことでチームのケアの質が向上し、患者のQOLも向上する。

 

2) チームの主役は患者

ホスピス・緩和ケア病棟と一般病棟との異なる点は、治療やケアにおいては全て患者の意志を尊重して方針を決定するということである。患者のQOLから考えてどうすることが最も良いのかを、患者の考えのもとに検討することが徹底している。そして患者・家族の思いや価値観を尊重して、患者が最後までその人らしく生きていくことを支援する。

 

3) 症状コントロールにおける看護婦の役割の重要性

がんの進行に伴う種々の症状の中でも、特に痛みは患者のQOLに大きく影響する。その人らしく生きるためには、まず痛みから解放されることが必要であり、疼痛コントロールは積極的に行わなければならない。疼痛コントロールにおいては、がんの痛みは身体的、社会的、霊的な要因が重なり合った全人的な痛みであるという視点に立つ。痛みの訴えを信じること。肯定的、共感的態度で対応し、患者の訴えを過小評価しないことが前提となる。

看護婦の役割は1]痛みについて効果的なアセスメントを行う。痛みの原因を知らなければコントロールはむずかしい。病態を知ることから症状コントロールは始まる。2]薬物療法について豊富な知識を持つ。治療効果を評価していくためには、ペインスケールやアセスメントツール、フローシートを活用する。副作用の状態を観察し、対策を十分に行う。副作用では特に便秘の予防が重要である。直腸診による確認や摘便、何種類もの薬剤や量の調整など、積極的に排便コントロールを行う。舌苔や口腔乾燥を予防するなどの口腔ケアも副作用対策として重要で、含嗽薬などそれぞれの施設で様々な工夫がされていた。3]疼痛閾値に影響を及ぼす因子を知る。疼痛閾値を低下させる因子を除去または軽減し、上昇させる因子へと変えるためには、特に看護婦が果たす役割が大きい。看護の質が問われる部分である。身体的な緊張や心理的緊張の緩和、補助用具の使用、散歩や趣味などで痛みに向けられている集中力の分散、マッサージ、入浴、罨法など痛みの緩和に有効と思われる看護ケアを実施する。

 

 

 

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