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・設備:全室個室(和室2室)。面会は24時間自由。病室、家族室での家族の宿泊可。有線放送・リビングルーム・ファミリーキッチン・家族浴室・特別浴室(リフトバス)・面談室

<看護の工夫>

・患者の負担とならないよう必要以外の検温や輸液は行わない(クイックを留置)。

・除圧器具の使用

・経口薬投与:内服しやすいよう粉末にし、シロップで溶解。

・口腔ケア:口腔内の状態に合わせ、重曹・ファンギゾン・オキシドール・レモン果汁・パインなどを使用。

・消臭対策:インテリアの一つとして、コーヒーのかすを使用。

・食事:固形物の摂取が困難な患者に対し、食べやすいようゼリーなどの半固形物の摂取を考慮。病院食に一品ずつ付けたり、病棟でエンシュアゼリーやシャーベットなどを用意。

 

チーム医療の実際

 

緩和ケア病棟に携わるスタッフとして、医師・看護婦・薬剤師・栄養士・MSW・精神科医師・チャプレン・ボランティアの方々が関わっている。申し送り、カンファレンスの場でディスカッションが行われる。患者により良いケアを提供するため、スタッフ全員が同じ目線で意見を交換し、目標を見出している。お互いの立場や専門性を尊重しながら、何度も繰り返し話し合っていくということが大切であることを学んだ。

スタッフ一人ひとりが共通の認識を持ち、“おもてなしの心”で患者と接し、信頼関係が築かれていると感じた。細かい部分の工夫がなされており、暖かさを実感した。プライマリー制をとっているが、あくまで患者にとって窓口となる存在であるということ、問題が生じたとしても気負いなく援助ができるよう、アソシエートナースのサポート力によりストレスとならないのだろうと感じた。

 

まとめ

 

2週間という期間はとても短い時間だったが、多くのことを学ぶことができたと思う。緩和ケア病棟を見たのは初めての経験であり、設備の一つ一つに対し驚きがあった。一般病棟の無気質さは感じられず暖かさを実感した。私の緩和ケア病棟に対するイメージとして、ゆっくりと時間が流れ、患者と語り合う時間が十分にあるものだと思っていた。その時期の患者の状況、状態にもよるとは思うが、実際処置などが多くあり、時間が足りないという印象を受けた。やはりケアを通して関わり、短い時間の中でいかに患者の思いを聞き出すかということが求められるのかと痛感した。

患者が入院すると同時に、何が問題になり苦痛を来たしているのかを見極め、症状コントロールが開始される。適切な薬剤の選択と投与方法によって、早期に苦痛が緩和されることで患者の心は穏やかになり、その人らしさが取り戻せる。そして、医療者・患者間の信頼関係が早期に構築され、より深いものになるということを学ぶことができた。

日々の患者とのコミュニケーションも大切であるが、“入院時の面談”の時間がこれほど重要であるということが分かり、感動すら覚えた。「つらかったですね」「それは大変でしたね」などの労いの言葉が掛けられ、これまでのつらかった気持ちを引き出しながら面談は進められた。緊張していた患者・家族の表情は和らぎ、悲観的だった言葉が希望や目標を持った言葉に変わっていた。情報を得ながら約1時間が経過していたが、この短い時間ですでに信頼関係が生まれていることを実感した。医療者の言葉掛け一つで、患者・家族へ与える影響がこれほど大きいものだということを学ぶことのできた貴重な経験であった。どんな状況においても、コミュニケーション・スキルが求められているということを現場において実感した。これからの私自身の課題でもあり、克服していきたいと考えている。

 

 

 

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