栄光病院において、症状コントロールは患者とのコミュニケーションの中で、患者の訴えに耳を傾け、問い、観察する中でよりよい方策を立てている。患者の穏やかな表情からも、症状コントロールの大切さが伺える。また、夜間の十分な眠りの確保をすることも重要に考えており、いろんな薬剤、看護ケアを駆使し、良眠が得られるよう努力されていた。症状コントロールは全人的ケアという見地から、どうしても果たされるべき必要条件であるが、それは決して十分条件ではない。
3) インフォームドコンセントの実際
自分の死に臨んでいるホスピスの患者さんたちは、つまるところ一人の人間としてきわめて深刻な問題に直面し、その人生における最大の極限状態に陥っている。そのような方々に対して、下稲葉Drは医師として、良き友として、クリスチャンとして接しておられる。情報を分かりやすい言葉で何度も繰り返し伝え、また、幾度となく患者さんの側に行き、心と心の関わりを大事にされている。嘘はつかず、正直な姿で最後まで付き合っていく覚悟で患者さんの前に立っておられた。
4) チームにおけるそれぞれの役割と実際
栄光病院におけるチャプレンの関わり:
栄光病院のチャプレンは「患者全体を観る」ことを大事にされている。そして「今、ここに生きている」ことを感じられるように、また、患者自身が「今の気持ち」に気づけるように、コミュニケーションをはかることに苦慮されている。
下稲葉先生とはまた違った形での心のケアをされている。このように幾人もの人がスピリチュアルな関わりをもつということは、患者にとって本当に幸せなことだと思う。また、希望されれば病院で葬儀、納骨も可能ということ。遺族のグリーフケアにも深く関わっておられた。
職員の心のケア、院内のイベントの計画、調整もされており、多方面に深く関わっておられた。
5) ボランティア活動への参加
目的
・この団体は特別医療法人栄光会福岡亀山栄光病院の理念に基づき無償でボランティア活動を行い、医療とケアの充実に寄与すること。
・患者・家族とのコミュニケーションにより安らぎとうるおいを与え、生きている喜びや幸福を感じていただくこと。
・快適な療養環境を整えること。
フェイシャル・ハンドマッサージ・フットマッサージボランティア、九響音楽コンサートボランティア、コーラスボランティア、視覚・聴覚障害者の講義などに参加させていただいた。
病院職員の専門役割とは別に、ボランティアの方々は家族的雰囲気の中で患者さんのニーズに応えて、患者さんの心を癒す大切な役割をされていると感じた。
6) 回診におけるコミュニケーションの実際
《生まれてから「死」を迎えるまで、そして「死」のむこうまで、魂は永遠に生きることを目指しながら……。人生の幸せをお手伝いします》という信念があるから、患者と深いところで死について話をしていると感じた。症状コントロールは全人的ケアという見地からどうしても果たされるべき必要条件であるが、それは決して十分条件ではない……ということを、回診の場で感じることができた。
7) チームアプローチ:チーム医療のコミュニケーションの実際
患者さんと家族のもつ問題はさまざまであり、一人の看護婦やDrだけで対応しきれるものではない。そのためにチームアプローチが不可欠である。カンファレンスではDr、看護婦、チャプレンが参加し、Drが患者さんの状態、経過を話して現在の問題をみんなで話し合っている。それぞれの患者さんについてとくにケア上の問題点がある場合には、その症例について詳細なカンファレンスを行う。