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症状の中にはいろいろな方法を用いてもどうしても軽減できない症状、特に呼吸困難や倦怠感などは最善の方法を用いてもコントロールが難しく、セデーションをしなければいけないことがある。セデーションが必要になるであろう患者さんや家族には前もって話をしている。実際にセデーションが必要になった時には患者さん、家族の意志を確認するとともに、医療者側もチェックリストにそっで慎重に話し合いがなされていた。

 

家族援助とボランティアについて

 

患者さんとその家族をひとつの単位としてケアを提供している。常に相互の関係を見ながら、それぞれに独自の価値観と信念をもっていることを認識し尊重しながら援助を行っている。実際に患者さんに声をかけ話を聴くのと同じぐらい、家族にも声をかけ話を聴いてケアをしていた。また、患者さんと家族、あるいは家族みんなが同じ土台にたって患者さんと共に歩めるよう説明なども何度も行われていた。ある患者さんの家族は、この病院に来て私達にも本当に細やかな配慮をしていただき、夜間付き添っていても安心して休むことができています。気持ちが落ちつきました、というようなことを言われていた。またMSWの方も家族の方によくかかわっていた。

緩和ケアにおいていボランティアの役割は大きな位置を占めていると思われる。それは地域社会との架け橋として、あるいは患者さんのQOL向上のために貢献している。かとう内科のボランティアは個別援助、お茶会、生け花、図書、絵手紙、音楽会などのグループに分かれており、MSWがボランティアコーディネーターを兼ねて各グループ・個人の指導、調整を行っている。ボランティアの人がお茶会などを開いていると、普段部屋に閉じこもりがちな人でも外へ出るきっかけとなったり、近所の人と話すような感覚で話をしてみたり、生け花を見て季節を感じたりと、患者さんのQOLを向上させることになったり、患者さんや家族の安らぎの場となったりと、ボランティア独自の働きがある。この働きは医療とは関係のない地域の人が行っているから成り立っているのだと感じた。

また、かとう内科では緩和ケアに関わる職員にボランティアの意義や活動について研修をしているそうである。このことは職員がボランティアについてよく理解することに役立ち、お互いチームの一員として協力し合いながら患者さんによいケアを提供するために必要なことであると思う。

 

チームケアについて

 

患者さんのQOLを高めていくためには患者さんのさまざまなニーズを満たしていくことが必要である。しかしそれらのニーズを医師や看護婦で満たしていくには限界がある。そこでいろいろな職種の人達がお互いの専門性を生かしたアプローチが必要になってくる。多職種の人達がチームを組んで患者さんや家族によいケアを提供できるためには情報を共有することが大切であると思う。

かとう内科では医師、看護婦、医療ソーシャルワーカー、作業療法士、栄養士、看護助手、ボランティアがチームを組んでケアを提供している。情報交換の場として毎週1回チームカンファレンスがあり、その他朝の申し送りや毎日のカンファレンスに医師や医療ソーシャルワーカー、作業療法士、看護助手も時間をとって参加している。

 

まとめ

 

かとう内科並木通り病院で実習させていただいて感動したのは、ホスピスの語源である「あたたかいもてなし」を私自身が受けたことです。そしてそのあたたかいおもてなしが患者さんや家族の方にも行われていました。病院で働く方全員からあたたかさを感じました。病院の理念や方向性がしっかりとあり、職員全員がそれを理解し同じ目的に向かって前進していっているのだと感じました。

私の勤務する病院でもホスピス病棟ができる予定であり、同じような地域の病院で実習させてもらっていろいろ参考になることが多く、まず何をやるべきかということが少し見えてきたように思います。実習中に見たこと、考えたことを参考にしながらホスピス病棟開設にむけて準備していきたいと思います。かとう内科並木通り病院の皆様、本当にありがとうございました。

 

 

 

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