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あたたかいもてなし

 

近藤内科病院

谷田 典子

 

施設について

 

かとう内科並木通り病院は、診療所として1997年に開業され、個人と家族そしてその方々を取り巻く地域社会との関わりの中で病んだ人を総合的(全人的)に看ていく家庭医療を行ってきた。そのことを基盤として住み慣れた地域社会の中で人々が生老病死の過程を完結できるようにと緩和ケア施設がつくられた。

基本は在宅ケアであり、在宅ケアを維持していくために訪問看護ステーション、在宅支援センター、緩和ケア外来が設けられている。

ここの緩和ケアの目的は地域に根ざしたPCUであり、一方、医療面では最期の日々まで必要な医療を提供することができ、かつ家族ぐるみのケアを継続して提供できる診療機能を有するPCUということである。

実際に高カロリー輸液、輸血、検査も想像以上に多いように思いました。しかしそれは、治療すればQOLの高くなる患者さんや、苦痛がなければ生きたい、生きていてほしいと願う患者さんや家族への適切な対応であるのではないかと考えた。

実習中に院長先生が、英国のホスピスは過小医療ではないかということが問題になってきていると言われたことや、信仰の少ない日本人にとって医療が必要であることもあると言われたことなどから、患者さんや家族の価値観や希望を十分に理解し、何のための医療を行うかをはっきりさせることが大切であると改めて感じた。

病棟のハード面については、患者さんと家族のプライバシーを大切にするため全室が個室となっており、日本人としての安らぎを尊重するために和風の内装を基調としていた。一部の個室には3畳ほどの畳スペースがあり、家族がゆっくりと休むのに最適であり、また患者さんと家族がいっしょに休んだり家庭の延長のように同じ畳の上で会話できたりするよいスペースだと思った。また廊下は広く、その何か所かにイスとテーブルが置いてあり、家族や面会の方あるいは患者さん自身が会話したり休息したりする場となっていた。ロビーは天井が高く開放的な感じで、ここで催し物なども行われているが誰でも参加しやすい雰囲気となっている。

入院生活については、緩和ケア病棟では何か時間がゆっくりと流れているように感じた。患者さんのケアや処置については患者さんの状態や希望に応じて進められており、患者さんの意志が尊重されていることが理解できた。しかし、それと同時に患者さんの希望でもそれが患者さんの害となることであれば専門職として十分に説明し、最善の方法をとらなければいけないことも再認識できた。

 

症状コントロールについて

 

緩和ケアの目標は、患者とその家族にとってできる限り可能な最高のQOLを実現することである。そのためにはまず症状のコントロール(身体的苦痛の緩和)が必要である。

かとう病院でも早急に症状(特に痛み)がとれるように薬剤の調整が行われている。それは必ずしもWHOの除痛ラダーにそったものではないが、痛みが軽減した段階で薬剤を減らしたり投与方法を考えたりすることもある。身体的苦痛を緩和するためには症状について十分な観察を行い、薬剤の効果、副作用についても細やかな観察が必要である。かとう病院ではフェイススケールを用いて痛み、呼吸困難などを表し、毎日のカンファレンスであるいはその時々に身体的苦痛についてアセスメントしている。その中心になるのは看護婦であるが、時にはOT、MSWなどの意見も加わり評価していくこともある。

 

 

 

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